全身性強皮症〔ぜんしんせいきょうひしょう〕 家庭の医学

 この病気は皮膚だけでなく内臓などにも硬化性病変がみられます。男女比は1対3とやや女性に多く、30~40代に多くみられますが、子ども、高齢者にも発病します。原因は不明ですが、免疫異常や代謝異常などが原因といわれています。
 また、美容形成などで異物を注入した人に類似した症状をみることから、環境因子も重視されています。レイノー現象(全身性エリテマトーデス参照)が、ほかの症状が出る前から長年にわたってみとめられることがあります。

[症状]
 早期にはレイノー現象とともに手指のはれと皮膚硬化がみられます。皮膚硬化は浮腫期から硬化期、萎縮期へと進行します。硬化期では手指の関節が屈曲して固まりワシの指のようになります。皮膚の硬化は手指から腕、顔、胸部などにもひろがりますが、硬化の範囲により全身型と限局型の2つの病型に分けられます。硬化とともに指尖(しせん)潰瘍、短指症、皮膚潰瘍、開口制限(口があきにくくなる)、色素沈着、色素脱失、毛細血管の拡張、皮膚石灰化などがみられます。関節痛や筋肉痛、筋力低下もみられます。
 内臓の障害では、物を飲み込むときにつっかえる感じ(食道下部拡張)、腸管の消化吸収障害、間質性肺炎・肺線維症、肺高血圧症、尿崩症、腎障害、腎血管性高血圧などがみられます。


[検査所見]
 抗核抗体の検査では、特異的な抗Sc1-70抗体が全身型にみられ、抗セントロメア抗体は限局型や亜型のCREST症候群でみられます。このほか抗核抗体では抗RNAポリメラーゼⅢ抗体と呼ばれる抗体が検出されるのも特徴です。

[診断]
 手や足の皮膚から、顔面や体幹など、からだの中心に近いところの皮膚がかたくなることが大切な所見で、これに加えて、①手指や足趾の皮膚がかたくなる、②指先に潰瘍や小さなくぼみを伴う瘢痕(はんこん)がみられる、③肺線維症がみられる、④抗トホ?イソメラーセ?Ⅰ(Scl-70)抗体または抗セントロメア抗体または抗RNAホ?リメラーセ?Ⅲ抗体が陽性の4つのうち、①に加えて2つ以上みとめられると、全身性強皮症の診断がつけられます(厚生労働省、2010年)。

[治療]
 対症療法が基本ですが、ペニシラミン、コルヒチン、グルココルチコイドなどが用いられます。
 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対しては、ニンテダニブの保険適用が認められています。ニンテダニブは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体を阻害するチロシンキナーゼ阻害薬です。これらの受容体機能を抑制することにより、線維芽細胞の増殖、遊走および血管新生の抑制を介した抗線維化作用により、呼吸機能の年間減量率を抑制します。また、レイノー現象や末梢循環障害に対して、血管拡張薬、抗血小板薬、抗凝固薬およびエンドセリン受容体拮抗薬などが用いられます。腎性高血圧症に対して降圧薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬など)が、肺高血圧症に対してはプロスタグランジン製剤を含む血管拡張薬、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬や酸素吸入などが用いられます。

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