一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏

(第19回) 平常心で丁寧な手術 =言葉遣いは混乱

 オフポンプでは一般に、スタビライザーという器具で心臓の一部の揺れを押さえながら手術を行う。最初に、う回路を作る際に使用する血管を採取し、それを心臓につないでいく。

 「冠動脈バイパス手術は心臓の筋肉ではなく、表面の血管にメスを入れます。バイパスとなる血管をつなぐ場面では、直径1.5~2ミリの血管を40ミクロンの糸を使って一周12~14針で縫いますが、あまり細か過ぎると血管が締まって血液の流れが悪くなります。術後の状態をイメージすることが大切で、ある程度ふわっと縫って自然にくっつくようにします」

 天野氏の手術は丁寧さに定評がある。バイパスのために採取した血管周囲に付いた膜や脂肪、細い枝もすべてきれいに処理してつないでいく。「手術中も仕上がりも美しいと思わせるこだわりがあります。まず余計な出血はさせない。また血管の表面に少しでもザラザラした部分があると、血液がスムーズに流れなくなってしまうからきれいにする。徹底的にこだわってやる。オフポンプの場合、バイパスをつないだ瞬間に血流が再開しますから、結果がすぐに分かります」。このこだわりが、手術成功率99.6%につながる。

 陛下の手術でも出血はほとんどなく、バイパスの血流も当初の予想以上に良好だった。午前11時すぎに始まった手術は午後3時前に完璧な形で終了した。                        (ジャーナリスト・中山あゆみ)


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