一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏
(第19回) 平常心で丁寧な手術 =言葉遣いは混乱
手術当日の2012年2月18日を迎えた。天皇陛下の3本の冠動脈のうち「左回旋枝(ひだりかいせんし)」と「左前下行枝(ひだりぜんかこうし)」に、血管内部が狭まり血液が流れにくくなる「狭窄(きょうさく)」が確認されており、東大と順天堂大の合同チームは、左右の内胸動脈を使ってう回路を作る冠動脈バイパス手術を行った。
心臓バイパス手術は現在、一部の例外を除けば人工心肺を使わずに心臓が動いたまま執刀する「オフポンプ」で実施することが多い。術後回復が早く合併症が少ないので、高齢者も安全に手術できるからだ。陛下の場合もこの方法で行われた。
「手術自体は普通のバイパス手術です。陛下は特別扱いされるのがお好きではないので、手術に使う道具などはいつも通りの物を使いました」と天野氏。ただ、手術自体には平常心で臨めたものの「敬語と丁寧語と謙譲語がしっちゃかめっちゃかで、自分の方に接頭語の『お』を付けて話しているスタッフもいました」と笑う。
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(2017/03/27 10:55)