一流に学ぶ 心臓カテーテルのトップランナー―三角和雄氏

(第2回)
「縁ある所に行くもんだ」
運命変えた受験、上京へ

 ◇浪人覚悟で予備校も

 当時は二期校制だったため、一期校で出願した大阪大のほか、東京医科歯科大と信州大にも出願していた。信州大は宿泊場所が取れず断念し、試験日が異なる東京医科歯科大を受けることにした。大阪大と偏差値は同等だったが倍率が50倍以上と高いので、視力が戻らなければ合格の可能性は低い。

 浪人する覚悟で、医学部受験専門予備校を先に受験していた。ところが不思議なことに、東京医科歯科大の受験日直前に、ほとんど見えなかった右目の視力が回復した。

 「入学試験はやってみたら結構できたんですよ。物理も化学も満点だと思ったし、数学も満点。世界史は1個間違えただけ。英語、国語もよくできた。倍率が高いから受かる可能性は低いけれど、あれで落ちるんだったら仕方ないと開き直った気持ちでいました」

 どうせ受かるはずはないし、合格発表を見るためにわざわざ大阪から東京に行く必要もないと思い、合格発表は東京都内に住む母親のいとこが見に行ってくれた。予備校の合格発表を見てから帰宅すると、母親からいきなり「どうするの?」って聞かれた。三角氏は「何が?」と聞くと、母親は「通っているんや」と笑顔を見せた。

 三角氏はすぐに東京医科歯科大の入学手続きを取った。「希望通りに大阪大に合格していたら、今の自分はなかったでしょうね。人生、縁ある所に行くもんだなあ」と振り返る。運命に導かれるように、三角氏の東京での生活が始まることになった。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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