「医」の最前線 緩和ケアが延ばす命
死ぬための医療から生きるための医療へ
〔最終回〕緩和ケア 今とこれから
緩和ケアの新たな形を目指して早期からの緩和ケア専業クリニックを開設
◇「緩和ケアちゃんねる」
国が2012年度より「がんと診断された時からの緩和ケア」をがん対策推進基本計画で示してから、来年で9年になります。以前よりは減りましたが、まだまだ「緩和ケアを受けたい時に受けられない」との声は少なくありません。
そんな方でもかかれるような新たな「早期からの緩和ケア外来」を提供するため昨年、クリニックを構えました。しかし、まだまだ緩和ケアの必要性や正しい理解は浸透していないと感じます。
医療側からもさまざまな発信がなされるようになっています。私も緩和ケア専門の動画チャンネル「緩和ケアちゃんねる」をYouTubeに構築し、正しい緩和ケアに触れられる機会を設けようと尽力しています。
緩和ケア専門チャンネルとしてコンテンツの充実に努めています
これからは、自分の生き方に合うように医療を活用してゆく時代です。言われるがままにしていれば、自分の希望と異なることになってしまうかもしれません。
◇現場で発せられる声
特に慢性病の場合は、医療者としっかりコミュニケーションを図り、質問し、自分の希望を伝えてゆくスキルを磨いてゆくことも大切です。皆さんが思っている以上に現場で発せられた声は、そこを変える力があります。
その時は響かないと、あるいは壁にはね返されたと見えても、その蓄積は長い目で見ると医療を変える力があるのです。
「緩和ケアを受けたい」と明示される方は以前よりも少しずつ増え、現場においてもその声に応える形で、「より前に」そして「他の施設の患者さんでも」などとニーズに応じる動きも認められています。
「緩和ケアは末期だけじゃない」「緩和ケアは早期から」。ぜひ知っていただき、周囲にも伝えていただければと思います。そして誰もが可能な限り苦痛が取り除かれ、与えられた生を全うできるようになることを願いつつ、連載の筆を置かせていただきます。
これまでお読みいただき、ありがとうございました。(緩和医療医・大津秀一)
大津 秀一氏(おおつ・しゅういち)
早期緩和ケア大津秀一クリニック院長。茨城県出身。岐阜大学医学部卒。緩和医療医。京都市の病院ホスピスに勤務した後、2008年から東京都世田谷区の往診クリニック(在宅療養支援診療所)で緩和医療、終末期医療を実践。東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンター長を経て、遠隔診療を導入した日本最初の早期からの緩和ケア専業外来クリニックを18年8月開業。
『死ぬときに後悔すること25』(新潮文庫)『死ぬときに人はどうなる 10の質問』(光文社文庫)など著書多数。
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(2019/11/19 07:00)