「医」の最前線 患者会は「今」

生涯続く病と共に 
就学や就職、自立支援も-心臓病の子どもを守る会

 100人に1人の割合で先天性心疾患をもつ患者が生まれてきます。そもそも心臓のつくりが通常とは違う病気で、成人病疾患(虚血性心疾患)とは障害の特性が大きく異なります。また疾患が多様で、手術・治療方法も一人ひとり違いますが、多くは血液の流れなどが正常でないため、子どもの頃に手術する必要があります。

第57回全国大会(静岡市 2019年10月)

 そして、幼児期に最終手術まで行うことができても、成人になってから(1)遺残症(心疾患の症状が残る)(2)続発症(手術後に新たに生じる不整脈などの心臓の疾患)(3)後期合併症(年齢が進むにつれて疾患の状態が悪化する)―といった問題が生じてきます。

 先天性心疾患は「根治」するものではなく、病気(障害)が生涯にわたって続くものと考えられています。成人期を迎えた患者は全国で50万人を超えると言われており、大人になった患者の問題へと対応する領域は広がっています。

 ◇手術で田畑を売った時代も

 全国心臓病の子どもを守る会(守る会)は1963年11月に発足しました。当時は心臓手術を受けられる病院が限られており、公費援助もありません。手術を受けるために家や田畑を売ったという経験が涙ながらに語られる時代でした。その後、守る会の運動もあって、手術費用への公的補助、小児慢性特定疾病の医療費助成などが整備され、心臓病で生まれても安心して医療が受けられるようになっています。

 結成当時100人だった会員は現在、3700世帯を超え、45都道府県に50支部あります。

書籍『新版心臓病児者の幸せのために』

 「心臓病です」と告げられて戸惑わない親はいません。「どうしてわが子だけが」「元気に産んであげられなくてごめん」。そんな思いで自責の気持ちと不安な思いにもなります。

 ◇子どもが心臓病と言われて

 親はなかなか病気を受け入れられないのが現実です。それだけに、病気に対する正確な知識を得ることが大切になります。学ぶことで病気を受け入れる道が開けてくるからです。守る会は、会員が病気への正しい理解を深めるための活動に力を入れています。

 さらに、親や心臓病者本人が直面するさまざまな問題を受けとめ、病気とともに生きてゆくために励ましあい、寄り添うことも大切な役割の一つです。

 「手術を乗り越えた姿に励まされました」―。生まれてからずっと病院にいて、大きく育つか分からない状態の息子を毎日見ていた鈴木さん(仮称)は、会員の子どもが手術を受けて成長している姿に励まされ、「勇気をもらうことができました」と振り返る。

 勇気をくれたその子は、赤ちゃんだった頃の鈴木さんの息子を覚えていました。再会すると「息子の成長を喜んでくれたことがとてもうれしかったです」と鈴木さんは話す。

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