「医」の最前線 患者会は「今」
生涯続く病と共に
就学や就職、自立支援も-心臓病の子どもを守る会
◇主治医と学校の配慮
乳幼児期から学齢期にかけては、体だけでなく心も大きく発達します。病気に気をとられてしまいがちですが、心の成長に気を配ることが大事です。社会性や人間関係を形成してたくましく生活を送れるようになるための準備の時期。集団生活へのステップアップを支えていくことが大切になります。
第57回全国大会で講演する坂本喜三郎・静岡県立こども病院院長(静岡市 2019年10月)
学校では、子どもによって違う障害を先生や友だちに理解してもらうのがとても難しいですが、楽しく充実した学校生活を送れる環境を作る努力は大切です。事例は多くありませんが、就学前の子どものために主治医と協力して学校で勉強会を開くこともあります。
前田さん(仮称)の娘の主治医は、ほぼ全ての先生が参加した勉強会で、病気だけでなく救命救急の話まで分かりやすく説明した上で、校舎での娘の移動距離を確認。体育館前に自動体外式除細動器(AED)が1台あったのですが、「持ち出し用のAEDがあると安心ですね」と主治医が指摘すると、学校側は娘の教室に持ち出し用AEDを1台置いてくれました。
就学後は運動制限をお願いしていますが、「ほとんどの授業はみんなと一緒。安心しています」と前田さんは語る。
◇所得制限に愕然
大人になって社会に出て働き、自立するには患者自身が病気について学び、周りに伝えることが望まれますが、それだけでは克服できない壁があるのも事実です。
第49回心友会全国交流会(鹿児島県 2019年7月)
「働きたい」「働き続けられるだろうか」「親がいなくなったらどうやって生活を…」。こうした患者の不安は切実で、守る会は経済的自立を可能にする就労環境づくり、働けない心臓病患者のための所得保障の拡充にも力を入れています。
在宅で酸素を吸入し、外出時は車いすを使用している加藤さん(仮称)は大人になって肺高血圧症が進み、2年前から新薬オプスミットを飲み始めました。1カ月の医療費は、在宅酸素と新薬で7万円(3割負担)に達しましたが、住んでいる県の重度心身障害者医療費助成制度に所得制限(前年度159万円)があり、医療費助成が受けられません。他の都道府県の中には、こうした医療費助成に所得制限を課していないケースがあります。
加藤さんの身体障害者手帳は1級です。それでも、会社を辞めるか、県外に出なければ、重度医療の助成を受けられません。このことに加藤さんは改めて愕然(がくぜん)とし、「病気のことだけでも不安なのに医療費の負担がのしかかり、精神的にとてもつらい思いでした」と語っています。
機関誌「心臓をまもる」
◇全ての人に優しい社会
守る会は、子どの誕生から就学、就職、就労継続ための支援。生活を圧迫する医療費負担、収入が少なくなっても安心して生活を送れる障害年金など、生活を支える福祉施策・社会保障制度の改善を訴えています。また、通院や入院のための休暇制度への理解拡大など、全ての人に優しい社会の構築に向けて活動の輪を広げていきたいと考えています。(全国心臓病の子どもを守る会事務局長 下堂前亨)
一般社団法人 全国心臓病の子どもを守る会
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活動の詳しい内容はホームページ「全国心臓病の子どもを守る会」へ
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(2019/11/17 08:00)