先天性心疾患
心臓のかたちが正常につくられなかった生まれつきの病気で、全出生児の1%に存在します。その原因は多くの遺伝子が関与しているとされ、現在でも一部しかあきらかにされておりません。
[症状]
症状は疾患によって異なりますが、心臓の血液を全身に送るポンプ機能の低下による心不全症状(哺乳不良、体重増加不良、汗を多くかく、呼吸や脈拍が速くなったりする)やチアノーゼ(くちびるや爪の色が紫色になる状態で、酸素が少ない静脈血が動脈血に混ざるために起こる)が出現します。
[検査]
診察では身長、体重を測定し、発育が順調かどうかを調べます。前述した心不全症状やチアノーゼの有無を観察します。また心臓の雑音を聴取することによって、どのような病気かを推測することができます。
心不全により肝臓がはれることがあるので、おなかをさわって肝臓が肋骨(ろっこつ)の下に大きく出ていないかを調べます。
検査は心電図、胸部X線検査、超音波(心エコー)検査などを外来でおこないます。心電図では不整脈の有無や、心肥大の有無がわかります。また胸部X線検査では、心臓の拡大の有無や肺へ行く血液量の増減がわかります。超音波検査では心臓の形態と動きのほか、血液の流れも観察することができます。
さらに、入院のうえ、太ももの血管から鉛筆のしんよりやや太いカテーテルという細い管を心臓まで進め、心臓内の圧や血液の酸素量を調べたり、造影剤というX線に写る液体を注入したりする心臓カテーテル検査が必要な場合もあります。
[治療]
内科治療は、利尿薬(尿を多くして余分な水分を体外に出して、心臓の負担を軽くする薬)や強心薬(心臓のはたらきを増強する薬)、血管拡張薬(末梢血管をひろげて心臓の負担を減らす薬)を内服します。最終的には外科手術が必要となりますが、手術の方法や器具が改良され、いままで手術が不可能であった病気が手術できるようになったり、手術による死亡率がいちじるしく下がっています。
乳児期後半以降の手術では、無輸血でおこなえる施設もあり、輸血後肝炎などの心配がなくなりました。
しかし、小児の心臓の手術はもっとも熟練を要する分野で、特に複雑心奇形といわれる複数の心奇形を有する心臓の手術や、新生児期、乳児期早期の手術は、施設が限られてきます。そのため、どの施設で手術をしてもらうかを担当の医師とよく話しあう必要があります。
いっぽう、カテーテルを用いて、異常な血管や壁の孔(あな)を閉じたり、細い弁や血管に風船を進めてふくらませて細い部分をひろげるなどの治療も現在では可能となっています。
[注意]
日常生活の注意事項も知っておかなくてはいけません。
心不全やチアノーゼが軽度であれば、予防接種は通常どおりでさしつかえなく、むしろ積極的におこなって病気を予防する努力をすべきです。
心不全症状やチアノーゼがある患者は抵抗力が弱く、かぜをひきやすいので注意が必要です。かぜをひけば肺炎になりやすく、肺炎になれば心不全症状やチアノーゼは悪化します。
具体的には、人込みに連れていかない、家族もかぜをひかないように注意することが大切です。心不全症状やチアノーゼがある患者は、運動制限も必要です。主治医に運動管理区分表を書いてもらって学校に提出します。
また、心臓の病気のために血液の流れが速いところができると、心臓や血管の内膜が障害され、そこに細菌が付着しやすくなり、感染性心内膜炎という重症な病気にかかりやすい状態になります。
特に、口内の雑菌がからだに入り、感染性心内膜炎を起こすことが多いので、むし歯がひどくなって歯を抜くときなどは、必ず処置前に抗菌薬を服用します。日ごろからむし歯に注意することが大切で、歯科医にかかるときは、あらかじめ心臓に病気があることを伝えておきましょう。
もし治療が必要な程度の重症度であれば、公的な医療費助成制度(小児慢性特定疾病など)があるので、手続きをしましょう。手術の費用も育成医療制度によって、公費負担となるので、医療費については心配ありません。
【参照】心臓の病気:先天性心疾患
(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光)
[症状]
症状は疾患によって異なりますが、心臓の血液を全身に送るポンプ機能の低下による心不全症状(哺乳不良、体重増加不良、汗を多くかく、呼吸や脈拍が速くなったりする)やチアノーゼ(くちびるや爪の色が紫色になる状態で、酸素が少ない静脈血が動脈血に混ざるために起こる)が出現します。
[検査]
診察では身長、体重を測定し、発育が順調かどうかを調べます。前述した心不全症状やチアノーゼの有無を観察します。また心臓の雑音を聴取することによって、どのような病気かを推測することができます。
心不全により肝臓がはれることがあるので、おなかをさわって肝臓が肋骨(ろっこつ)の下に大きく出ていないかを調べます。
検査は心電図、胸部X線検査、超音波(心エコー)検査などを外来でおこないます。心電図では不整脈の有無や、心肥大の有無がわかります。また胸部X線検査では、心臓の拡大の有無や肺へ行く血液量の増減がわかります。超音波検査では心臓の形態と動きのほか、血液の流れも観察することができます。
さらに、入院のうえ、太ももの血管から鉛筆のしんよりやや太いカテーテルという細い管を心臓まで進め、心臓内の圧や血液の酸素量を調べたり、造影剤というX線に写る液体を注入したりする心臓カテーテル検査が必要な場合もあります。
[治療]
内科治療は、利尿薬(尿を多くして余分な水分を体外に出して、心臓の負担を軽くする薬)や強心薬(心臓のはたらきを増強する薬)、血管拡張薬(末梢血管をひろげて心臓の負担を減らす薬)を内服します。最終的には外科手術が必要となりますが、手術の方法や器具が改良され、いままで手術が不可能であった病気が手術できるようになったり、手術による死亡率がいちじるしく下がっています。
乳児期後半以降の手術では、無輸血でおこなえる施設もあり、輸血後肝炎などの心配がなくなりました。
しかし、小児の心臓の手術はもっとも熟練を要する分野で、特に複雑心奇形といわれる複数の心奇形を有する心臓の手術や、新生児期、乳児期早期の手術は、施設が限られてきます。そのため、どの施設で手術をしてもらうかを担当の医師とよく話しあう必要があります。
いっぽう、カテーテルを用いて、異常な血管や壁の孔(あな)を閉じたり、細い弁や血管に風船を進めてふくらませて細い部分をひろげるなどの治療も現在では可能となっています。
[注意]
日常生活の注意事項も知っておかなくてはいけません。
心不全やチアノーゼが軽度であれば、予防接種は通常どおりでさしつかえなく、むしろ積極的におこなって病気を予防する努力をすべきです。
心不全症状やチアノーゼがある患者は抵抗力が弱く、かぜをひきやすいので注意が必要です。かぜをひけば肺炎になりやすく、肺炎になれば心不全症状やチアノーゼは悪化します。
具体的には、人込みに連れていかない、家族もかぜをひかないように注意することが大切です。心不全症状やチアノーゼがある患者は、運動制限も必要です。主治医に運動管理区分表を書いてもらって学校に提出します。
また、心臓の病気のために血液の流れが速いところができると、心臓や血管の内膜が障害され、そこに細菌が付着しやすくなり、感染性心内膜炎という重症な病気にかかりやすい状態になります。
特に、口内の雑菌がからだに入り、感染性心内膜炎を起こすことが多いので、むし歯がひどくなって歯を抜くときなどは、必ず処置前に抗菌薬を服用します。日ごろからむし歯に注意することが大切で、歯科医にかかるときは、あらかじめ心臓に病気があることを伝えておきましょう。
もし治療が必要な程度の重症度であれば、公的な医療費助成制度(小児慢性特定疾病など)があるので、手続きをしましょう。手術の費用も育成医療制度によって、公費負担となるので、医療費については心配ありません。
【参照】心臓の病気:先天性心疾患
(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光)