こちら診察室 医療チームの一員! ホスピタル・ファシリティドッグ
日本初のファシリティドッグが誕生するまで 【第5回】ハンドラーの森田優子さん
◇子どもたちの力を引き出す
歩くリハビリでは、ベイリーが一緒だと知らない間にいつもの数倍歩くこともあります。1分でも早く家に帰りたいはずなのに、「ベイリーに会ってから帰る」と言って、ベイリーに会うまで外泊に出ない子もいました。そして、もしかしたら子どもたち以上にファシリティドッグのことを必要としているかもしれないと思うほど、ご家族も心待ちにしてくれています。
「どうやって活動の幅を広げていったのですか?」とよく聞かれるのですが、私が何か努力したわけではなく、ベイリーの力を最大限引き出してくれたのは患者である子どもたちと、子どもたちの頑張る力を一番に考える医師や看護師でした。
全ての場面において、日本で初めて犬を入れるということは、「前例」を重視する日本ではどれだけ大きな決断だっただろうと思うと、今でも静岡県立こども病院には敬意を表したいです。
現在では、ファシリティドッグの導入病院は4カ所に増え、他にも導入に関する問い合わせが各地の病院から届くようになりました。私がハンドラーになる前、「もっと子どもたちの入院生活が楽しくなるように」という夢を抱いて始めた活動でしたが、入院生活の楽しみにとどまらず、想像していた以上に治療の手助けにもなり、必要な存在なのだと感じています。もっと多くのファシリティドッグが活躍できる日本を目指し、精進していきたいと思います。(了)
※ Assistance Dogs of Hawaii:シャイン・オン・キッズが設立当初から連携している、ハワイ・マウイ島にあるファシリティドッグを含む介助犬のトレーニング施設
森田優子さん
森田優子(もりた・ゆうこ) 認定NPO法人シャイン・オン・キッズ所属、神奈川県立こども医療センター勤務、ファシリティドッグ・ハンドラー。04年静岡県立大学看護学部看護学科卒。同年国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)看護部入職、09年シャイン・オン・キッズのファシリティドッグ・ハンドラーに就任。10年ファシリティドッグ「ベイリー」とともに日本初のファシリティドッグ・チームとして静岡県立こども病院で活動開始。12年ベイリーとともに神奈川県立こども医療センターに転任。17年ベイリーの後任犬であるアニーを迎え、同病院にてアニーと活動を継続中。
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(2025/01/10 05:00)
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