こちら診察室 リウマチ治療の最前線

リウマチとうまくつきあっていくためには
~仕事、出産も可能に~ 【第6回】

 リウマチは女性に多く発症する自己免疫疾患です。リウマチによるこわばりや関節の痛みは耐え難いもので、罹患(りかん)する前と同じような生活を送るのは難しいかもしれません。

 しかし、近年の治療法の進歩により、リウマチになったとしても仕事や出産といったライフイベントを諦める必要はなくなりました。

 本コラムでは、リウマチを抱える女性が仕事や家庭生活を続けながら、どのように病気と向き合っていけばよいのかについて詳しく解説します。リウマチの早期治療や適切な対処法を学び、前向きに生活を送れるサポートができれば幸いです。

 ◇2年以内に30%で関節破壊が進行

 リウマチは、発症から2年以内に約30%の方で関節破壊が進行すると言われています。これは免疫系が自身の関節を攻撃することで起こる炎症が原因です。しかし、早期診断と適切な治療により、リウマチの進行を大幅に遅らせることが可能になりました。

 近年の治療法では、抗リウマチ薬や生物学的製剤などが用いられ、多くの患者さんが症状をコントロールしながら活動的な生活を送っています。

リウマチによる休業・廃業・退職ゼロを実現(イメージ画像)

 ◇仕事続けるため早期治療が重要

 リウマチを抱えながら仕事を続けるためには早期治療が鍵となります。発症初期に適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、仕事に支障を来さないようにすることができるでしょう。

 リウマチを抱えながら仕事を続けるために重要なポイントをまとめたので、一つひとつの課題をクリアし、リウマチによる休業・廃業・退職ゼロを実現していきましょう。

 ◇現状を詳しく伝え、治療戦略を立てる

 リウマチを持ちながら仕事を続けるためには、診察時に現状を詳しく医師に伝えることが非常に重要です。リウマチは症状が個々に異なり、その日によっても状態が変わるため、医師に具体的な症状や困っていることを正確に伝える必要があります。

 例えば、どの関節が痛むのか、痛みの程度や頻度、仕事中にどのような動作が困難なのかを詳細に説明しましょう。これにより、医師は患者の生活環境や仕事の内容に応じた治療計画を立てることができます。適切な治療戦略によって症状の管理がしやすくなり、仕事と治療の両立が可能になるでしょう。

 ◇診断書をもらい、会社への理解を得る

 リウマチを持ちながら働く場合、職場の理解を得ることも重要です。医師から診断書をもらい、会社に提出することで、上司や同僚に自身の状況を理解してもらいやすくなります。

 診断書には、リウマチの診断結果や治療内容、仕事における配慮が必要な点などが記載されているため、具体的なサポートを受けるための根拠になります。会社側も、従業員が健康的に働けるようにするための環境整備や業務調整を行いやすくなります。

 こうした理解と協力を得ることで、無理のない働き方を実現し、長期的に仕事を続けることが可能になります。

 ◇仕事を休まずに通院・治療を続ける

 リウマチの治療を続けながら仕事を休まずに行うためには、計画的な通院スケジュールを立てることも大切です。治療のための通院日をあらかじめ決めておくことで、仕事との両立がしやすくなります。

 また、通院の際に柔軟な勤務時間を設定するなど、会社と相談して適切な対応を取りましょう。定期的な治療と通院を怠らないことで、リウマチの症状を管理しやすくし、仕事のパフォーマンスを維持することが可能です。

リウマチが結婚や妊娠、出産の障害になることはない(イメージ画像)

 ◇夫婦で主治医から説明を受ける

 リウマチの患者さんの妊娠・出産は、かつては難しいとされていましたが、現在では適切な管理の下、多くの方が母親になっています。

 「このままのきつい生活で無事出産できるのだろうか」「出産後育児をできるのだろうか」「治療で痛み・腫れ・関節破壊を抑えられるのだろうか」など、不安もあるでしょう。だからこそ、妊娠を希望する場合は主治医と相談し、治療計画を立てることが重要です。リウマチが結婚や妊娠・出産の障害になることはありません。

 また、妊娠・出産を希望する場合、夫婦で主治医からの説明を受けることも重要です。隠し事をしては、結局、後々悩みやトラブルのもととなるでしょう。夫婦で計画的に進めることで、リウマチの症状を管理しながらの妊娠・出産が可能になります。また、夫婦でのオープンなコミュニケーションは、リウマチと共に生きる上で重要な支えとなり、より良い生活の質につながるでしょう。

 ◇前向きに生活することが大事

 リウマチと共に生きることは確かに挑戦ですが、適切な治療と自己管理、そして周囲のサポートがあれば充実した人生を送ることができます。多くの患者さんがリウマチとうまく付き合いながら、仕事や家庭生活で輝いています。

 あなたもリウマチを抱えながらも、自分らしい人生を歩んでいけるはずです。一緒に希望に満ちた未来を築いていきましょう。(了)

湯川宗之助医師

 湯川宗之助(ゆかわ・そうのすけ) 1975年生まれ、東京都出身。2000年東京医科大学医学部医学科卒業後、同大学病院第三内科、産業医科大学医学部第一内科学講座を経て、15年に湯川リウマチ内科クリニックを開院。16年一般社団法人リウマチ医療・地域ネットワーク協会を設立。リウマチの正しい理解を促す啓蒙活動を精力的に行う。関節リウマチの啓発活動、継続的なその取り組みが評価され、さまざまなメディアでも紹介。20年にはKADOKAWA出版より書籍を発刊。


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