こちら診察室 リウマチ治療の最前線
リウマチ体操 【第9回】
関節リウマチの管理において、日々の関節運動は非常に重要です。発症予防と進行抑制のために、1日最低1回はすべての関節を動かすことを推奨しています。
しかし、リウマチ体操は慎重に行う必要があります。痛みを無視して無理に関節を動かすと逆効果になり、症状を悪化させる可能性があるからです。従って、「無理なく、動かせる範囲」で運動を行うことが基本原則となります。
具体的には、10回の動作を1セットとし、1日2セットを目安に行いましょう。ただし、個人の状態に応じて、痛みや疲労が生じない範囲で調整することが重要です。運動のタイミングとしては、午後と入浴後の1日2回がおすすめです。
リウマチ体操は無理なく、動かせる範囲で運動を行うことが基本原則(イメージ)
◇関節を動かそう~リウマチ体操の知っておきたいポイント
まずは、リウマチ体操を行う際に知っておきたい重要なポイントについて解説していきます。
①動かせる範囲で関節を動かす
リウマチ体操を行う際に最も重要なポイントは、自分の関節が動く範囲内で運動を行うことです。関節の可動域は人それぞれ異なり、また同じ人でも日によって変化することがあります。
自分の体調や関節の状態を注意深く観察しながら、無理のない範囲で運動を行いましょう。関節が動く範囲を少しずつ広げていくことで、徐々に可動域を改善することができます。ただし、急激な改善を目指すのではなく、長期的な視点で少しずつ進歩していくことが大切です。
②痛みや腫れがあるときは無理せず痛くない程度に
リウマチの症状が活動期にある場合、関節に炎症が起こり、痛みや腫れが生じることがあります。このような状態で無理に運動を行うと、炎症をさらに悪化させる可能性があります。
痛みや腫れがある場合は医師に相談し、適切な処置を受けることが先決です。その上で、痛みの手前までの範囲で非常にゆっくりと、そして注意深く運動を行います。痛みを我慢して運動を続けることは避けましょう。むしろ、痛みのない範囲でできる運動を選択し、関節への負担を最小限に抑えることが重要です。
③頑張りすぎて翌日に痛みが残らない程度に
リウマチ体操は継続することが非常に重要です。そのためには、一日の運動量を適切に調整し、翌日に痛みや疲労が残らないようにすることが大切です。
運動後に軽い疲労感を感じる程度が適切な運動量の目安です。もし翌日まで痛みや強い疲労感が残るようであれば、それは運動量が多過ぎたサインかもしれません。その場合は、次回からの運動量を少し減らすなどの調整が必要です。
毎日続けることができる適度な運動量を見つけることが長期的にリウマチ体操を続けるコツです。無理をせず、自分のペースで着実に続けていくことがリウマチ管理の成功につながります。
◇リウマチのリハビリ方法を知ろう
ここからは、自宅で簡単に行えるリウマチのリハビリ方法を幾つか紹介します。
①胸を開いてゆっくり深呼吸
背筋を伸ばし、腕を後ろへ振り、胸を反らせながら大きく息を吸い、腕を元に戻しながら吐きます。ゆっくり行いましょう。
②肩の上げ下げで肩関節の可動域を維持
両手を体の横につけ、力を抜いて、肩を上げ下げします。肩周辺の筋力アップと、肩関節の可動域を維持します。
③腕を広げて手のひらを前後に返し肩をねじる
肘を伸ばしたまま両腕を少し開き、手のひらを前後に返します。肩関節の可動域を維持します。
④腕を上げ下げして筋力と可動域を維持
背筋を伸ばして両腕を前へ上げます。次に、体の後ろへ引きます。腕の筋力アップと、肩関節の可動域を維持します。
⑤腕を大の字に動かして肩の可動域を維持
腕を体の横につけます。遠くの方に伸ばすようなつもりで、腰から上へ動かします。腕の筋力アップと、肩関節の可動域を維持します。
⑥体を左右にねじって体幹の可動域を維持
「気をつけ」の姿勢から体をゆっくりと左右交互にひねります。体幹の関節の可動域を維持します。
⑦肘の曲げ伸ばしで肘関節の可動域を維持
「気をつけ」の姿勢から、右手で右肩を、左手で左肩を触れるように肘を曲げます。次に右手で左肩を、左手で右肩を触れるようにします。肘関節の可動域を維持します。
◇無理せず毎日行い、筋力アップと可動域の維持を目指しましょう!
リウマチ体操は関節リウマチの管理において非常に重要な役割を果たします。これらの運動を毎日継続して行うことで、関節の可動域を維持し、筋力をアップさせることができます。
しかし、重要なのは無理をせずに行うことです。自分の体調や関節の状態に合わせて、できる範囲で運動を行いましょう。痛みを感じたら、すぐに運動を中止し、医師や理学療法士に相談することが大切です。
また、リウマチ体操は単独で行うものではなく、適切な薬物治療や生活習慣の改善と組み合わせて行うことで、より効果的になります。定期的な医療機関の受診と、医師の指示に従うことを忘れずに。
リウマチ体操を毎日の習慣として取り入れることで関節の機能を維持し、日常生活の質を向上させることができます。無理せず、長期的な視点で継続することがリウマチ管理の成功につながります。健康的で活動的な生活を目指しましょう。(了)
湯川宗之助医師
湯川宗之介(ゆかわ・そうのすけ) 75年生まれ、東京都出身。00年東京医科大学医学部医学科卒業後、同大学病院第三内科、産業医科大学医学部第一内科学講座を経て、15年に湯川リウマチ内科クリニックを開院。16年一般社団法人リウマチ医療・地域ネットワーク協会を設立。リウマチの正しい理解を促す啓蒙活動を精力的に行う。関節リウマチの啓発活動、継続的なその取り組みが評価され、さまざまなメディアでも紹介。20年にはKADOKAWA出版より書籍を発刊。
(2024/11/07 05:00)
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