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リウマチの出やすい部位 【第3回】

 リウマチは主に関節に症状が現れる疾患です。このコラムでは、リウマチの症状が特に出やすい部位について詳しく解説します。リウマチを理解することで早期発見や適切な治療の一助となるでしょう。

 ◇「滑膜」ある関節ならどこにでも症状

関節の症状が出やすい部分(引用:湯川リウマチ内科クリニック)

関節の症状が出やすい部分(引用:湯川リウマチ内科クリニック)

 リウマチは関節の滑膜に炎症を引き起こす病気であり、滑膜がある関節ならどこにでも症状が現れる可能性が高いです。

 滑膜とは、関節を覆う膜で、関節液を分泌し、関節の滑らかな動きを助ける役割を果たしています。リウマチによってこの滑膜が炎症を起こすと、関節全体に影響が及び、腫れや痛み、機能障害が生じます。

 このため、滑膜が存在する関節であれば、どこにでもリウマチの症状が出る可能性があるのです。ほっておくのは得策ではありません。

 手の指(第二・第三関節)や手首

 リウマチは、特に手の指や手首に症状が現れやすいです。具体的には、第二関節(中手指節関節)や第三関節(指間関節)が炎症を起こしやすいです。

 腫れ、痛み、こわばりを伴うことが多く、日常生活に支障を来すことがあります。朝起きた時に手指がこわばる、物を握りにくいといった症状が見られることも多いです。

 ひじ、ひざ、肩の大きな関節

 リウマチの症状は、ひじ、ひざ、肩といった大きな関節にも現れます。これらの関節に炎症が起こると、腫れや痛み、熱感が生じることがあります。

 特にひざ関節に症状が出ると、歩行が困難になることがあります。また、肩関節の炎症は腕の動きを制限し、肩こりや肩の痛みを伴うことが多いです。

 ◇ひざ関節の髄膜が炎症すると、腫れや痛み・変形

 ひざ関節の髄膜が炎症を起こすと、腫れや痛みが生じることがよくあります。

 炎症が続くと、関節の変形や運動機能の低下も引き起こされることがあり、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 外側へ変形する【内半膝(ないはんしつ)】

 内半膝は、膝が外側へ変形する状態を指します。これは、膝の内側の関節が損傷し、外側に圧力がかかることで生じます。内半膝は歩行時のバランスを崩し、転倒のリスクを高めることがあります。早期に矯正やリハビリを行うことで、進行を防ぎ、症状の軽減を図ることが重要です。

 内側へ変形する【外半膝(がいはんしつ)】

 外半膝は、膝が内側へ変形する状態を指します。膝の外側の関節が損傷し、内側に圧力がかかることで生じます。歩行や日常生活の動作に支障を来すことが多く、痛みや不安定感を伴うことが一般的です。治療には物理療法や矯正器具の使用が推奨されます。

 左右どちらか一方に変形する【波形膝】

 波形膝は、膝が左右どちらか一方に変形する状態です。片側の膝関節に負担が集中することで起こり、左右の脚のバランスが崩れることが特徴です。歩行時の不安定感や痛みを伴うことが多く、治療には適切なリハビリテーションや物理療法が必要です。

 ◇関節以外の症状をチェック

 関節の炎症は、全身にさまざまな症状を引き起こす可能性があります。具体的な関節以外の症状について詳しく見ていきましょう。

関節以外に起こる可能性がある症状(引用:湯川リウマチ内科クリニック)

関節以外に起こる可能性がある症状(引用:湯川リウマチ内科クリニック)

 関節を動かす筋力の低下や骨粗しょう症

 関節の炎症は、周囲の筋力低下や骨粗しょう症を引き起こすことがあります。筋力が低下すると、関節の安定性が損なわれ、さらなる関節の損傷リスクが高まります。

 骨粗しょう症は、骨の強度が低下し、骨折のリスクが増加するのです。適切な運動や栄養摂取が予防に役立ちます。

 末梢神経の圧迫による手の痺れ

 関節の炎症が進行すると、末梢(まっしょう)神経が圧迫され、手の痺れや痛みを引き起こすことがあります。これにより、日常生活の動作に支障が出ることがあります。神経圧迫の症状は、早期に医師の診断を受け、適切な治療を行うことが重要です。

 重症のリウマチは血管炎を伴う

 重症のリウマチは、血管炎を伴うことがあります。血管炎は血管の炎症で、これにより臓器への血流が妨げられ、さまざまな臓器障害を引き起こす可能性があります。生命を脅かすこともあるため、早期の診断と積極的な治療が必要です。

 全身の臓器に現れることも

 関節の炎症は、しばしば関節以外の全身の臓器にも影響を及ぼします。例えば、リウマチ性心臓病や肺炎などが挙げられます。これらの症状は、関節の症状と同様に早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。

 ◇定期的な健康チェックを

 リウマチは、関節を中心に全身に影響を及ぼす疾患です。早期発見と適切な治療が重要であり、症状が現れたら速やかに専門医の診察を受けましょう。また、日々のセルフケアや生活習慣の改善も症状のコントロールに役立ちます。定期的な健康チェックを心がけ、リウマチとうまく付き合っていくことが大切です。(了)

湯川宗之助医師

湯川宗之助医師

 湯川宗之助(ゆかわ・そうのすけ) 1975年生まれ、東京都出身。2000年東京医科大学医学部医学科卒業後、同大学病院第三内科、産業医科大学医学部第一内科学講座を経て、15年に湯川リウマチ内科クリニックを開院。16年一般社団法人リウマチ医療・地域ネットワーク協会を設立。リウマチの正しい理解を促す啓蒙活動を精力的に行う。関節リウマチの啓発活動、継続的なその取り組みが評価され、さまざまなメディアでも紹介。20年にはKADOKAWA出版より書籍を発刊。


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