生活習慣病の予防と食事 家庭の医学

 生活習慣病を予防するには、食事・運動・休養の3本の柱があります。
 食事と運動は、どっちがよいかと議論するものではなく、取り組む人やそのときの条件で違ってきます。若い世代の人は、活発に活動して、しっかり食べたほうがよいでしょうし、高齢者は、消費エネルギーの多い運動は、できなくなりますから、運動の目的は、「筋力のおとろえを防ぐ」「インスリンの作用を高める」「気分をリフレッシュする」などとなります。ですから、目標とする体重の維持を基本に、食べる量を消費エネルギーにあわせるようにします。
 一般には、年を重ねると嗜好(しこう)が、「油っぽいものからあっさりしたもの」へ変化し、食べる量が自然に減ってきます。しかし、このからだの変化と嗜好の変化の速度のバランスがわるいと、肥満ややせ(低栄養)になってしまいます。低栄養は、免疫(めんえき)力の低下だけでなく、あらゆる疾患の罹患(りかん)のリスクを高めます。高齢期になっても、「適度な運動」と「しっかり食べる」ことが大切です。
 食事は、からだを動かすためだけではなく、食べたものを材料にして、血液、筋肉、消化酵素などをつくります。運動は、消費エネルギーを高めるだけでなく、筋力をつくり、姿勢を正しく保ち、インスリンの作用や血液の循環をよくしています。
 休養は、回復の過程です。この場合の休養は、単に休むことではなく、日常使わない部分を使うことも意味します。あるときは、運動も休養になります。音楽を聞いたり、友人とおしゃべりしたりすることも休養です。
 この食事・運動・休養という三輪車を、体力と走っている道路の状況にあわせて、上手に運転し、加齢によって、誰でもむかえなければならない生理的な老化を遅らせる、あるいは、老化による筋力(量と質)の低下を防ぎ、病気の発症リスクを低下するようにすることが生活習慣病の予防です。

(執筆・監修:金沢学院大学 栄養学部栄養学科 特任教授 宮本 佳代子)