帝王切開瘢痕部症〔ていおうせっかいはんこんぶしょう〕

 典型的な帝王切開手術は、通常、子宮下部(子宮下節といいます)の子宮筋層を切開することで胎児を出します。子宮筋層の治りかたは個人差がありますが、人によっては創部に陥凹が生じて子宮筋層がえぐれてしまうことがあります。えぐれた部分から出血があると、生理のとき以外にも出血をみるようになり不正出血として認知されますが、不正出血は子宮の中に逆流する現象が時にみられ、不妊症になる可能性があります。また、えぐれた部分に胎児が着床すると異所性(子宮外)妊娠となり子宮破裂を起こす可能性がありますから注意が必要です。子宮の方向が子宮後屈になることもよくみられますので、帝王切開の経験がある場合は婦人科診察を受けるときに注意が必要です。
 これらの病態を帝王切開瘢痕部症と近年呼ぶようになっており、女性の生活の質を下げる疾患として注目されています。不正出血が不妊症に関連していると判断される場合には手術が必要になります。手術は腹腔鏡、子宮鏡、または開腹手術でおこない、えぐれた部分を切りとり縫い合わせることになります。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 准教授〔分子細胞生殖医学〕 平池 修)