異所性妊娠〔いしょせいにんしん〕 家庭の医学

 受精卵が子宮内(正確には子宮体部内)以外の、妊娠が継続できない場所に着床してしまう異常です。ほとんどは卵管に起こることが多いのですが、卵管は細い管のため胎児の発育につれてふくらみ、破裂してしまいます。

[症状]
 妊娠の徴候とともに、少量の出血、下腹部痛など流産と同じような症状が出ますが、なにもないこともあります。最近では妊娠初期に診断でき、破裂前に治療(手術)できることが多くなりました。破裂した場合は、急な下腹部激痛とともに腹腔(ふくくう)内に大出血し、ショック状態となり、輸血しながら緊急開腹手術をしないと生命にかかわります。

[原因]
 卵管内に癒着(ゆちゃく)がある、卵管が細いなどのために受精卵が途中でとまって着床してしまうために起こります。最近ではクラミジア感染などの性感染症による卵管炎の後遺症が多く、その他、人工妊娠中絶後の炎症などもあげられます。卵管の病変は左右両側に起こることが多いので、一度卵管妊娠になった人はくり返しやすいので注意しましょう。

[治療]
 破裂前なら開腹あるいは腹腔(ふくくう)鏡下手術などで、卵管切除がおこなわれます。小さい病変では、卵管切開や抗がん薬の注射なども試みられています。
 多くの場合、卵巣は残しますので卵管を取った側の卵巣から排卵はあります。患側から排卵された卵子が対側の卵管から子宮内に入り、妊娠することもあります。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 産婦人科 部長 竹田 善治)
医師を探す