子宮後屈〔しきゅうこうくつ〕 家庭の医学

 通常、子宮は、おなかの方向に傾いています。それが逆に、背中側に向かって傾いている状態を子宮後屈と呼びます。しかし、子宮の傾きにはもともと個人差があり、子宮後屈そのものは病気ではありません。
 昔は、子宮後屈をわざわざ手術で治すこともありましたが、最近では、特に後屈を治す治療はおこないません。ただし、ときには病気が原因で子宮後屈を起こしている場合もあります。特に近年注目を集めている病態として帝王切開瘢痕部症があげられます。出産機会の高齢化により帝王切開の頻度はきわめて高いですが、帝王切開により子宮下節(子宮下部)がえぐれてしまいますと、子宮の過度の後屈がみられることがあります。また、子宮内膜症や性感染症などのために、子宮の後壁が直腸などと癒着(ゆちゃく)を起こすと、後屈になることもあります。また、子宮筋腫があるために後屈になっていることもあります。このような場合には、子宮後屈そのものではなく、その原因となっている病気のために、不妊症や腰痛、月経痛などの症状が出現することがあり、手術などによる病気の治療が必要になることがあります。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 准教授〔分子細胞生殖医学〕 平池 修)
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