[脳、脊髄、神経の構造とはたらき]

■大脳のかたち
 大脳は大きく前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に分けることができます。

 内側から見ると、脳梁(のうりょう)という半円形の帯が見えます。これは左右の大脳半球をつないでいる神経線維からできています。

 大脳を尾側(脊髄につながる側)から見ると、まん中に眼球から出て交叉(こうさ)する視神経交叉が見え、その背側には乳頭体(にゅうとうたい)が左右2つ見えます。ここは記憶に関係する組織です。その下には中脳の断面が見えますが、前方には大脳脚(だいのうきゃく)という運動神経を脊髄に伝える神経路と、パーキンソン病と関係の深い黒質(こくしつ)という組織、その尾側には脊髄液を下に伝える中脳水道が見えます。

 図は、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像法)で見ることのできる脳の横断面図です。

 大脳皮質からの運動の命令は半卵円中心(はんらんえんちゅうしん)、内包(ないほう)を経て中脳の大脳脚、橋(きょう)、延髄(えんずい)さらに脊髄へ伝わります(上図「MRIで見られる脳の構造」と「脳の構造」「大脳の底面」参照)。
 大脳の中心には大脳基底核と呼ばれる部分があります。尾状核(びじょうかく)は脳室に沿って前後に長い組織ですが、ここに障害が起こるとハンチントン病を生じ、踊るような不随意運動が起こります。
 被殻(ひかく)は内包の外側にあり、やはりからだの自動的な運動をつかさどっています。視床はすべての感覚が一度はここに集まり、さらに大脳皮質の感覚領へと情報を送り出します。

 脊髄は8つの頸(けい)髄、12の胸髄、5つの腰髄、5つの仙髄、1つの尾髄からなっています。

 ここを上下に運動神経、感覚神経の情報が流れるだけではなく、それぞれの高さには神経細胞があって、筋肉の運動、自律神経機能をコントロールしています。

■脊髄のかたち
 図は脊髄の横断面です。

 脊髄の前角には前角運動神経細胞があって、これが長い神経を出し、筋肉を収縮させています。1つの前角神経細胞の大きさをテニスボール大とすると、この神経細胞は2~3km離れた筋肉をコントロールしていることになります。
 前角運動神経細胞の神経線維は集まって前根(ぜんこん)となり、脊髄から出ていきます。いっぽう、すべての感覚線維は集まって後根(こうこん)となり、脊髄に入ります。

■神経伝導
 図は神経の伝導を示します。自律神経などの髄鞘(ずいしょう)のない細い神経を無髄線維(むずいせんい)と呼びますが、これでは図に示したように、次々と隣の膜が興奮して伝わっていきます。

 伝導速度は毎秒1m前後とたいへんおそいので、これでは頭から足まで2秒近くかかってしまい、とうてい外敵から身を守れません。
 運動神経や太い感覚神経はまわりを髄鞘(ずいしょう)がおおっており、ところどころに軸索(じくさく)が顔を出しています。この場合は神経の興奮はこの顔を出しているところから次の顔を出しているところへと、とびとびに飛ぶように伝わっていきます。これを跳躍伝導と呼んでいます。この場合は毎秒60mとたいへん速く、外敵から身を守れるようになっています。

■神経と筋
 図は運動神経の末端が筋に接するところを示しました。

 これを神経筋接合部と呼びます。神経の興奮が末端にとどくと、ここの末端(神経終末)からアセチルコリンが分泌されます。
 アセチルコリンは筋肉の受容器を刺激して筋肉に収縮が起こります。いったん分泌されたアセチルコリンはコリンエステラーゼという酵素で分解されてなくなります。

(執筆・監修:一口坂クリニック 作田 学)