解剖学的検査(病気の場所がどこにあるかを知る検査)

 病気の場所がどこにあるかを知る検査です。

■単純X線検査
 以前よりは少なくなりましたが、からだに害がないこと、ただちに検査できることから最初におこなわれることが多い検査です。頭痛では、副鼻腔(ふくびくう)の炎症の有無を判断し、変形性頸椎(けいつい)症、脊柱管狭窄(きょうさく)症、脊髄腫瘍、転移性脊椎腫瘍、脊椎炎などの診断にはとても有力です。頭部では前後像と側面像、頸椎では斜位を含めて4方向の撮影をします。これは頸椎の椎間孔の狭小化の有無をみるためです。

■CT(コンピュータ断層撮影)検査
 脳の器質的疾患が疑われるときには、まずX線CTをおこないます。検査部位としては頭部、脊髄、筋のCT検査です。CTは耳の穴と目(眼窩〈がんか〉)を結ぶ線を基準として、これに平行な1cm間隔の面で検査していきます。
 脳の写っている灰色の度合いを基準として、白く見えるものを高吸収といい、黒く見えるものを低吸収といいます。高吸収になるものは出血と石灰化があり、低吸収になるものには浮腫、梗塞、脂肪があります。このようにして3次元的な病変の位置、病変の性質から診断をしていきます。

■ヨード造影剤静注によるCT検査
 増強CTともいいます。オムニパークなどのヨード造影剤100mLを静注したあとにCT撮影をおこないます。脳腫瘍や、発症約2週後の脳梗塞、脳炎、多発性硬化症の急性期などで増強効果がみられ、単純CTよりも高吸収となります。
 慢性硬膜下血腫では血腫は増強効果を示さず、脳とのコントラストがつき、診断が容易になります。

■MRI(磁気共鳴画像法)
 X線を使用しないので安全な検査ですが、大きな磁場がかかるため、体内に金属が入っていると検査ができないことがあります。実際に検査前に金属探知器でチェックをします。特に心臓ペースメーカーが入っているときにはできません。磁場の強度が0.25テスラ以下の機械を常伝導MRI、0.5~3.5テスラの磁場を用いるのを超伝導MRIといいます。撮影の条件には5種類あり、T1強調画像、T2強調画像、FLAIR(フレア)画像、T2強調画像(T2star強調画像)、拡散協調画像(Diffusion image:DWI)と呼びます。T1強調画像の特徴は髄液腔(くう)が黒く(低信号という)見られることで、病変は基本的に黒く描出されます。
 CTスキャンにおけるヨード造影剤のように、ガドリニウムの静注によって病変が白く(高信号という)増強されます。いっぽう、T2強調画像では髄液腔が白く見られ、病変は一般に白く描出されます。ただし、ほんとうの病巣のほかに、その周囲の浮腫も高信号になり、病変が実際よりも広く見えることが多く、正確な病変のひろがりにはT1での判定が必要です。FLAIR画像は髄液の信号を低く抑え、脳梗塞のT2における高信号を強調してみせる方法です。
 MRIがCTと大きく異なる点は、骨のアーチファクトがないことです。CTでは骨が白く写り、骨に囲まれた部分、特に後頭蓋窩(こうとうがいか)と呼ばれる複雑な部分が判定できません。また、画像がCTよりも格段にこまかく、正確な診断が可能です。ところがMRIは価格が非常に高価なことから、どうしても緊急時には間に合わないことが多く、脳卒中の診断にはまずCTをおこない、しばらくしてから病変のひろがりや後頭蓋窩の病変の有無についてMRIで検討するのがふつうです。脳・脊髄の器質的病変、筋疾患を精査するときに用いられます。
 T2強調画像では出血性病変が黒く描出され、過去に発症した出血巣の確認や無症候性脳出血の検出ができます。
 拡散強調画像では超急性期の脳梗塞が白色に描出され、検出が可能です。

■MRA(MR血管造影)
 MRIを用いて頭蓋内外の重要な動脈を検査する方法です。総頸動脈、内頸動脈、ウィリス輪、椎骨動脈、脳底動脈の変化をとらえることができます。年々画像の質が向上し、これまでは入院して危険性のある血管造影をおこなっていた病気でも、外来で危険なしに検査が容易にできるようになりました。
 MRAによって、動脈の状態を正確に知ることができます。たとえば動脈が90%近く狭くなっていれば、近い将来に脳梗塞を起こす危険性が高いといえるでしょう。このようにMRAは脳血管障害の危険性を知り、治療方針を立てるうえで大切な検査です。MRIと同様、からだに金属が入っていると検査できません。

■SPECT(脳血流シンチグラフィ)
 123I-IMPなどの放射線を出す物質を静注し、ガンマカメラで頭の外からその放射線を撮影し、脳の血流を測定するものです。CTやMRIが脳の形態の異常をあらわすものとすれば、SPECTは血流など脳の機能の異常をあらわすものと考えられます。対象疾患としては、脳梗塞(脳血栓症、脳塞栓症)、アルツハイマー病などの認知症の疾患があります。アルツハイマー病では、CTやMRIなどでまだ変化がつかまらない時期からすでに側頭葉や頭頂葉の血流が低下するため、正確な診断をすることができます。

■脳ドーパミントランスポーターシンチグラフィ
 123I(イオフルパン)を注射して脳血流シンチグラフィの方法で脳を撮像するものです。パーキンソン病やレビー小体型認知症において脳の基底核のドパミントラスポーターの分布を描出することができます。

■MIBGシンチグラフィ
 123Iで標識したMIBG(metaiodobenzylguanidine:メタヨードベンジルグアニジン)は神経伝達物質であるノルアドレナリンと似た構造をもち、心筋の交感神経末梢に取り込まれるので、心臓を支配している交感神経の状態を知ることができます。異常があれば、パーキンソン病あるいはレビー小体型認知症と診断できます。

(執筆・監修:一口坂クリニック 作田 学)

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