心臓には内側に膜(心内膜)が張られていますが、なんらかの原因で血液中に細菌が入り込み、この心内膜にうつって感染をきたしたものをいいます。
よくあるのが、
弁膜症があることを知らずに歯科で抜歯を受け、口の中の菌(口腔内の常在菌)が血液の中に入り込み、菌血症となって起こるものです。この感染症は重症で、特に弁膜症がある場合には異常な弁に細菌の巣をつくってしまいます。重症になると弁そのものを破壊して、弁膜症をさらに重症化させることがあります。
また、弁に付着した贅腫(ぜいしゅ)という菌の塊のようなものがはがれて、血液の流れにのってしまうことがあり、もしもそれが脳の血管につまると
脳梗塞となります。つまらなくても、菌が脳の血管に付着して壁をこわし、瘤(こぶ)をつくることがあり、これが破裂すると致命的な脳出血をきたすこともあります。弁膜症があり、原因不明で長く続く発熱などがあった場合には、感染性心内膜炎を疑って、
心臓超音波検査(心エコー検査)などの検査を受ける必要があります。さらに感染性心内膜炎と診断された場合には、脳血管などの精密検査も必要となります。
呼吸困難をきたすような
心不全を起こして、いますぐに手術などを受けないと命にかかわるという緊急事態であれば、すぐに手術がおこなわれます。
しかし、細菌感染が原因であり、抗菌薬による治療が十分におこなわれないかぎり再発の危険性が高いことや、また、機械弁(炭素繊維やチタンからつくられた人工弁)に感染を起こした場合にはさらに治療が困難となって再手術を必要とすることがあるため、有効な抗菌薬が確認されるなど、治療法のめどがある程度たった時点で手術を受けることが望ましいと考えられています。
(執筆・監修:
公益財団法人 榊原記念財団 附属 榊原記念病院 副院長/榊原記念クリニック 院長 井口 信雄)
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