治療・予防

主症状は長引く熱―感染性心内膜炎 
診断の遅れで命取りにも

 心臓病患者や心臓人工弁の置換手術を行った患者で生じやすい感染性心内膜炎は、的確な診断で早期に治療が開始されないと死の危険がある。しかし、主に発熱を繰り返すだけの症状から気付くのは難しい。大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学講座・循環器内科学の中谷敏教授に聞いた。 

口内をきれいに保つことは、感染性心内膜炎の予防に役立つ

口内をきれいに保つことは、感染性心内膜炎の予防に役立つ

 ▽7割に心臓の持病

 感染性心内膜炎は、何らかのきっかけで血液中に入り込んだ細菌が主に心臓の弁や心臓の内側を覆う心内膜などに付着して感染症を起こし、疣腫(ゆうしゅ)と呼ばれるいぼ状の感染巣が形成されて、発熱や血管の詰まり(塞栓)、心不全などを引き起こす病気だ。発症は年間10万人に3~7人と多くはないが、治療が遅れると命に関わる。

 感染性心内膜炎を起こしやすいのは、心臓の弁に異常が見られる心臓弁膜症の人や、その治療のため人工弁に置き換えている人、先天性の心疾患がある人などだ。「患者のおよそ70%は心臓に何らかの持病があります。歯科、耳鼻咽喉科、泌尿器科などの治療後に原因不明の発熱を繰り返す場合は要注意です」と中谷教授。その他、心拍数の上昇や息切れなどの症状にも注意を要するという。疣腫の一部が剥がれ、破片が血管を詰まらせると、脳梗塞などの塞栓症の原因になり得る。脳梗塞予防のためにも診断が急がれる。

 ▽抗生物質を長期投与

 診断では、心エコー検査により弁の状態や疣腫の存在を、血液培養検査で細菌の有無と種類を確認する。必要に応じてコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)を用いることもある。細菌の特定により、適切な抗生物質の選択が可能となり、薬物治療の効果を上げることができる。

 抗生物質は高用量を静脈内に投与する。期間は4~6週間にわたる。疣腫の中は血流に乏しく、抗生物質が効きにくいからだ。抗生物質が効かない、あるいは効果を待つ間に心不全や血管の塞栓が進行してきた場合には、手術で疣腫の切除や弁の再建を図る。

 「発見が早ければ、重大な事態は避けやすくなります。心臓の病気を持っている人は、感染性心内膜炎を意識して定期的に専門医を受診してください。また、主なきっかけである歯科治療時の体内への細菌の侵入を防ぐために、口内の手入れを怠らず予防に努めてほしい」と中谷教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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