弁膜症のカテーテル治療

 弁膜症の手術は、心臓外科医による開胸手術が必要となります(弁膜症の外科的治療)。これは、実際に胸を切り開き、心臓をとめて人工心肺という大きな機械に心臓と肺の肩代わりをさせながら心臓を切って弁の手術をする方法です。しかし近年、カテーテル(細い管)による手術がおこなわれるようになってきました。

■経皮的大動脈弁置換術(TAVI / TAVR)
 大動脈弁狭窄症に対してカテーテル治療がおこなわれており、経皮的大動脈弁置換術(TAVI / TAVR)といわれています。
 具体的には、足の付け根などからカテーテルを入れて、新しい生体弁を乗せたバルーン(風船)をふくらませながら植え込んでしまうという治療法です。使用している生体弁やバルーンなどの進歩により急速に普及してきていますが、いまのところ高齢者やほかの病気などにより開胸手術がむずかしいと考えられている患者さんが対象となっています。


■僧帽弁のカテーテル治療(Mitra-clip)
 最近は、僧帽弁閉鎖不全症に対してもカテーテル治療がおこなわれるようになってきています。心臓の機能が低下して心臓が大きくなり、僧帽弁の根元が拡大してしまい、難治性の心不全をくり返している人を対象としたものです。
 これらの人では、僧帽弁の部分が拡大したために2枚の扉がうまく閉じなくなっています。この閉じなくなった2枚の扉をクリップで中央からひっかけて近づけ、血液の逆流を少なくするという治療法です。
 また欧米では、大動脈弁と同じようにカテーテルで人工弁に交換する治療が始まっており、今後治療の選択肢がひろがることが期待されています。

(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団 附属 榊原記念病院 副院長/榊原記念クリニック 院長 井口 信雄