[腎臓の構造とはたらき]
□位置と構造
腎臓の大きさはちょうどにぎりこぶしほどといわれており、かたちはソラマメによくたとえられます。腎臓の位置は腰のあたりよりすこし高い背中側にあり、左右一対となっています。重さは、大人では片方の腎臓が100~150gくらいです。腎臓の断面をみると、外側から皮質、髄質、腎杯、腎盂(じんう)からなっています。腎盂に尿が出て、それが尿管へと流れ込んでいきます。
腎臓は、心臓から大動脈と腎動脈を経由して血液の供給を受けています。心臓が送り出している血液量全体の約4分の1もの量を両方の腎臓であわせて受け取っています。腎動脈は腎臓の中に入るといくつかの血管を経て、最後は糸球体にたどりつきます。糸球体は毛細血管が糸玉のようになって形成されている部分です。この糸球体という部位に入る血管(輸入細動脈)と出ていく血管(輸出細動脈)が収縮・拡張することにより、糸球体内部の圧が調節されています。
□はたらき
[濾過・再吸収]
腎臓の重要なはたらきは体内の不要物の除去です。糸球体は内部の圧を利用した濾過(ろか)により、この除去をおこないます。糸球体には細かい穴があり、からだに必要な赤血球や白血球、また、たんぱく質のような大きな物質はこの穴を通過できませんが、それ以外のおもに水と電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)は糸球体内部から濾(こ)し出され尿細管に流されます。糸球体と尿細管をあわせたものをネフロンといい、片方の腎臓におよそ100万個あります。
尿細管では、再吸収と尿の濃縮がおこなわれます。再吸収というのは、一度糸球体で濾過したもののうち、必要な物質を体内にふたたび取り込む作業です。
尿細管には大きく分けて4つの部位がありますが、まず近位尿細管では、おもに濾過により送り出された水とナトリウムが再吸収され、ついでヘンレ係蹄(けいてい)ではおもに尿の濃縮が、遠位尿細管ではナトリウム、カリウムの再吸収が、さらに最後の集合管では水の再吸収がおこなわれます。
このようにして、糸球体で濾過されたもののうち99%近くが再度体内へ戻っていきます。腎臓では糸球体を通して1分間におよそ100mL(1日で約150L)の水分が濾過されていきますが、そのほとんどが再吸収され、実際に尿として体外へ排出されるのは1日で1~1.5Lにしかすぎません。尿細管では体内の水分や塩分の量を一定に保つように再吸収をたえず調節しているのです。
次に、腎臓の大切な仕事はたんぱく質の代謝です。たんぱく質はからだの中で使われたあと、アミノ酸を含む多くの小分子に分解され、糸球体を通して濾過・排泄(はいせつ)されます。アミノ酸の種類によって再吸収される割合が異なっていますが、アミノ酸の多くは体外へと排泄されていきます。
[重要な生理活性物質の産生]
腎臓は濾過(ろか)・再吸収以外に、さまざまな生理活性物質(からだのはたらきを調節する役割をもつ物質)を産生しています。そのなかでも、レニンという酵素、エリスロポエチンというホルモンと、活性型ビタミンD3というホルモンは特に重要なはたらきをしています。
・レニン
レニンは、肝臓でつくられるアンジオテンシノーゲンに作用して、アンジオテンシンIという物質をつくります。アンジオテンシンIは、さらにアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンⅡに変換されます。このアンジオテンシンⅡは、生体内では非常に多岐にわたる作用を有していますが、もっとも重要な作用は血管を収縮させることと、副腎という臓器でつくり出されるアルドステロンというホルモンの調節です。
この血管収縮は両刃(もろは)の剣です。血圧が低下して腎臓に供給される血液の量が減ると、腎臓はレニンを分泌して血管を収縮させます。その結果、血管の容積が減るのでそのぶん、血液は腎臓などの臓器に届きやすくなります。これは血管収縮のよい面です。その半面、血管が収縮して容積が減少すれば血管壁が血液から受ける圧力(血圧)は高くなります(血圧上昇)。
アルドステロンは、尿細管におけるナトリウムの再吸収をうながします。アンジオテンシンⅡにも同様のはたらきがあります。血中のナトリウムが多すぎると、ナトリウムが水分の吸収をうながすため血液の量がふえ、血管壁に与える血液の圧力は高まります(血圧上昇)。
このようにアンジオテンシンⅡは、血圧や水・電解質の調節に重要なはたらきをしています。
・エリスロポエチン
エリスロポエチンは、おもに赤血球をつくり出すのに重要なはたらきをしています。したがって、腎機能が落ちてくると赤血球の産生が低下し、貧血となります。
・ビタミンD3
ビタミンD3というホルモンは骨のカルシウム吸収を助けたり、また腸管や腎臓にはたらいてカルシウムとリンの代謝を調節しています。ビタミンD3のもとは肝臓でつくられ、皮膚で紫外線によりビタミンD2に変換され、腎臓で活性を有するビタミンD3に変換されます。腎機能が低下してビタミンD3が不足すると、骨はカルシウムを吸収できないだけでなく、血中カルシウム濃度が低下するので骨からカルシウムが溶け出します。
□浸透圧と酸塩基平衡の調節
腎臓では、血液の浸透圧(しんとうあつ)の調節を尿細管での水の再吸収を介しておこなっています。腎臓に障害が生じたりすると、尿を濃縮できなくなります。また、酸塩基平衡(さんえんきへいこう)も尿細管での水やナトリウム、カリウムの再吸収を介して調節しています。
腎臓の大きさはちょうどにぎりこぶしほどといわれており、かたちはソラマメによくたとえられます。腎臓の位置は腰のあたりよりすこし高い背中側にあり、左右一対となっています。重さは、大人では片方の腎臓が100~150gくらいです。腎臓の断面をみると、外側から皮質、髄質、腎杯、腎盂(じんう)からなっています。腎盂に尿が出て、それが尿管へと流れ込んでいきます。
腎臓は、心臓から大動脈と腎動脈を経由して血液の供給を受けています。心臓が送り出している血液量全体の約4分の1もの量を両方の腎臓であわせて受け取っています。腎動脈は腎臓の中に入るといくつかの血管を経て、最後は糸球体にたどりつきます。糸球体は毛細血管が糸玉のようになって形成されている部分です。この糸球体という部位に入る血管(輸入細動脈)と出ていく血管(輸出細動脈)が収縮・拡張することにより、糸球体内部の圧が調節されています。
□はたらき
[濾過・再吸収]
腎臓の重要なはたらきは体内の不要物の除去です。糸球体は内部の圧を利用した濾過(ろか)により、この除去をおこないます。糸球体には細かい穴があり、からだに必要な赤血球や白血球、また、たんぱく質のような大きな物質はこの穴を通過できませんが、それ以外のおもに水と電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)は糸球体内部から濾(こ)し出され尿細管に流されます。糸球体と尿細管をあわせたものをネフロンといい、片方の腎臓におよそ100万個あります。
尿細管では、再吸収と尿の濃縮がおこなわれます。再吸収というのは、一度糸球体で濾過したもののうち、必要な物質を体内にふたたび取り込む作業です。
尿細管には大きく分けて4つの部位がありますが、まず近位尿細管では、おもに濾過により送り出された水とナトリウムが再吸収され、ついでヘンレ係蹄(けいてい)ではおもに尿の濃縮が、遠位尿細管ではナトリウム、カリウムの再吸収が、さらに最後の集合管では水の再吸収がおこなわれます。
このようにして、糸球体で濾過されたもののうち99%近くが再度体内へ戻っていきます。腎臓では糸球体を通して1分間におよそ100mL(1日で約150L)の水分が濾過されていきますが、そのほとんどが再吸収され、実際に尿として体外へ排出されるのは1日で1~1.5Lにしかすぎません。尿細管では体内の水分や塩分の量を一定に保つように再吸収をたえず調節しているのです。
次に、腎臓の大切な仕事はたんぱく質の代謝です。たんぱく質はからだの中で使われたあと、アミノ酸を含む多くの小分子に分解され、糸球体を通して濾過・排泄(はいせつ)されます。アミノ酸の種類によって再吸収される割合が異なっていますが、アミノ酸の多くは体外へと排泄されていきます。
[重要な生理活性物質の産生]
腎臓は濾過(ろか)・再吸収以外に、さまざまな生理活性物質(からだのはたらきを調節する役割をもつ物質)を産生しています。そのなかでも、レニンという酵素、エリスロポエチンというホルモンと、活性型ビタミンD3というホルモンは特に重要なはたらきをしています。
・レニン
レニンは、肝臓でつくられるアンジオテンシノーゲンに作用して、アンジオテンシンIという物質をつくります。アンジオテンシンIは、さらにアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンⅡに変換されます。このアンジオテンシンⅡは、生体内では非常に多岐にわたる作用を有していますが、もっとも重要な作用は血管を収縮させることと、副腎という臓器でつくり出されるアルドステロンというホルモンの調節です。
この血管収縮は両刃(もろは)の剣です。血圧が低下して腎臓に供給される血液の量が減ると、腎臓はレニンを分泌して血管を収縮させます。その結果、血管の容積が減るのでそのぶん、血液は腎臓などの臓器に届きやすくなります。これは血管収縮のよい面です。その半面、血管が収縮して容積が減少すれば血管壁が血液から受ける圧力(血圧)は高くなります(血圧上昇)。
アルドステロンは、尿細管におけるナトリウムの再吸収をうながします。アンジオテンシンⅡにも同様のはたらきがあります。血中のナトリウムが多すぎると、ナトリウムが水分の吸収をうながすため血液の量がふえ、血管壁に与える血液の圧力は高まります(血圧上昇)。
このようにアンジオテンシンⅡは、血圧や水・電解質の調節に重要なはたらきをしています。
・エリスロポエチン
エリスロポエチンは、おもに赤血球をつくり出すのに重要なはたらきをしています。したがって、腎機能が落ちてくると赤血球の産生が低下し、貧血となります。
・ビタミンD3
ビタミンD3というホルモンは骨のカルシウム吸収を助けたり、また腸管や腎臓にはたらいてカルシウムとリンの代謝を調節しています。ビタミンD3のもとは肝臓でつくられ、皮膚で紫外線によりビタミンD2に変換され、腎臓で活性を有するビタミンD3に変換されます。腎機能が低下してビタミンD3が不足すると、骨はカルシウムを吸収できないだけでなく、血中カルシウム濃度が低下するので骨からカルシウムが溶け出します。
□浸透圧と酸塩基平衡の調節
腎臓では、血液の浸透圧(しんとうあつ)の調節を尿細管での水の再吸収を介しておこなっています。腎臓に障害が生じたりすると、尿を濃縮できなくなります。また、酸塩基平衡(さんえんきへいこう)も尿細管での水やナトリウム、カリウムの再吸収を介して調節しています。
(執筆・監修:医療法人財団みさき会 たむら記念病院 院長 鈴木 洋通)
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