化膿性関節炎〔かのうせいかんせつえん〕

 細菌が関節内に到達して増殖したものが化膿性関節炎です。治療が遅れると関節破壊を起こすので、できるだけ早期に医療機関の受診、診断、治療の開始が必要です。

[原因]
 部位別頻度は、大人では膝(ひざ)関節、股(こ)関節、肩関節の順、子どもでは膝関節、股関節、足関節の順ですが、全身のどの関節にも起こる可能性があります。
 原因は、成人では血液によって細菌が運ばれて起こるとされていますが、膝関節では関節穿刺(かんせつせんし:水抜き)や副腎皮質ステロイド薬、ヒアルロン酸などの関節内注入療法の際の不潔な操作により細菌がもたらされて起こることもあります。基礎疾患として糖尿病がある場合や膠原(こうげん)病などでステロイド治療を受けている場合などが、感染を起こしやすい状況です。乳児で多くみられる化膿性股関節炎は、大腿(だいたい)骨上端部の骨髄炎が関節内に波及したものが大部分です。

[症状]
 発熱などの全身症状のほかに、罹患(りかん)関節には痛み、腫脹(しゅちょう)、発赤(ほっせき)、関節が動かせず屈曲したままにしている(関節不動)などの症状がみられます。
 ことばがまだ話せない乳幼児では関節不動やふつうとは手足の向きが違い、足が内側に向いている異常などに注意をはらう必要があります。

[診断][治療]
 血液検査で赤沈値の亢進(こうしん)、CRPの上昇、白血球数の増加がみられますが、弱毒菌の場合にはあまりそれらの数値が健常値と差がないこともあります。関節内にうみがたまっている場合には、X線検査で関節のすき間が広くなっていることが早期からみられることがあります。
 進行すると骨萎縮(いしゅく)、関節のすき間が狭くなる、関節面の不整、のちには骨破壊、関節のすき間が消失するなどのX線所見がみられます。
 注射針を刺して関節にたまっている液を吸引すると、その液(関節液)は黄白色に混濁しています。関節液の培養検査で起炎菌を調べることと、どの抗菌薬が効くのかを調べる感受性試験をおこなうことは必須ですが、その検査の前に起炎菌が不明のままで抗菌薬が使用されると培養検査で菌が検出されないことがあり、抗菌薬の投与前に関節液の培養検査と感受性試験をおこなうことが重要です。
 貯留したうみの培養検査提出後には、即座に抗菌薬による治療を開始します。初期にはいろいろな菌に対応できるよう、広域に効果のある抗菌薬を使い、数日後に培養検査による菌の同定(菌の種類をはっきりさせること)と感受性試験の結果が出た時点で、もっとも効果が期待できる抗菌薬に切り替えます。
 また、感染を早期に沈静化し関節破壊を最小限にくいとめるために、緊急手術による関節洗浄の処置が必要です。一度の洗浄でうみの関節貯留がおさまることもありますが、数回くり返す必要があることもあります。場合によっては、持続的に関節内を洗浄する治療法(持続灌流〈かんりゅう〉療法)が選択されることもあります。
 感染の急性症状がおさまったら、関節可動域訓練を開始し、関節の拘縮(こうしゅく)を最小限にくいとめることが必要です。関節破壊がいちじるしい場合には、感染が治癒していることを確認したうえで、人工関節置換術や関節固定術がおこなわれる場合もあります。

医師を探す

関連トピックス