骨は骨基質(建物でたとえると鉄骨)とそれに沈着するカルシウム(セメントに相当します)から成り立っています。骨軟化症(小児でみられるものを“くる病”といいます)は、骨へのカルシウムの沈着が障害された状態をいいます。カルシウムが骨基質に沈着するためには、リンと結合したヒドロキシアパタイトになる必要があります。したがってカルシウム、リンの両者が必要です。
骨軟化症のおもな原因はビタミンD不足、ビタミンDの作用の障害、いろいろな低リン血症(ビタミンD代謝物作用障害、腎尿細管異常、線維芽細胞増殖因子23〈fibroblast growth factor 23:FGF23〉作用過剰、およびリン欠乏など)、吸収不良(腸の切除や慢性炎症)、抗けいれん薬などの薬剤、一部の重金属などです。ビタミンDは紫外線の助けを借りてつくられ、あるいは食物から摂取されます。
その後、肝臓や腎臓で変化を受けて最終的に活性化されたビタミンDになります。ビタミンDの主要な作用はカルシウムの吸収促進です。ビタミンDの不足や作用の異常があると、血液中のカルシウム、リンが低下し、石灰化が障害されて骨が弱くなり腰痛、背部痛、下肢痛、筋力の低下などがみられます。
進行例や小児期発症例では骨の変形(O脚、背骨の変形)、低身長などを呈します。また、病的骨折もまれではありません。血中カルシウム、リンが低く、アルカリホスファターゼという酵素が増加します。骨のX線写真では特徴的な変化を示します。
治療には活性型ビタミンDやその前駆体を使用しますが、リンの低下による場合(尿からのリン排泄〈はいせつ〉が過剰となるまれな病気)ではリン製剤を投与します。
(執筆・監修:東京女子医科大学 常務理事/名誉教授 肥塚 直美)
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