顔面骨骨折 家庭の医学

解説
 顔面は人間にとって機能的、外見的に重要な部分です。そのため顔面骨骨折の治療では、骨折をただ「くっつける」だけでなく、「きれいに治す」ことが大切です。

■顔面骨の特徴
 頭蓋骨と顔面骨は、15種類23個の骨が複雑に組み合わさってできています。卵の殻のように薄い部分が何カ所かあり、強い外力が加わると骨折を起こします。

 顔面骨の中には神経・血管や筋肉などが入っているため、骨折の部位によっては、神経の障害によるしびれや筋肉の機能障害などが起こります。

■顔面骨骨折の治療
 骨折の程度が軽い場合などは手術をおこなわずに、自然に治るのをまちます。骨折部のずれが大きい場合や、神経や筋肉の障害を起こしている場合は手術をおこないます。
□手術の時期
 骨折した直後は腫(は)れていることが多いため、正確な手術が困難です。そのため、骨折して1~3週間後に手術をおこなうのが一般的です。
□切開について
 顔に大きな傷あとを残さないために、口の中やまつ毛の近くなどを切開します。
□骨折の固定
 ずれた骨をもとの位置に戻して、プレートやネジなどで固定します。チタン製のプレートは固定力が強く、錆びるなどの変化はほとんど起こりません。しかし、プレートの除去を希望される場合は再手術が必要です。
 近年では、吸収性プレートが用いられるようになってきています。術後半年から数年かけて体内で分解されるため、除去手術の必要がありません。
□陳旧性(ちんきゅうせい)顔面骨骨折
 骨折したあと1カ月以上たつと、骨折部はくっついて動かなくなります。手術の時期をのがした場合や適切な治療を受けられなかった場合は、顔面の変形や機能障害が残ります。
 このような場合は、変形や障害の程度に応じて、顔面骨の骨切り術や骨・軟骨などの移植術によって治療します。

(執筆・監修:埼玉医科大学 教授〔形成外科・美容外科〕 時岡 一幸)