名古屋大学病院産婦人科の村岡彩子氏らは、Fusobacterium感染が子宮内膜症発症の要因であり、抗菌薬による治療が子宮内膜症に対する新規治療法となりうることをSci Transl Med2023; 15: eadd1531)に報告した。

TAGLN陽性筋線維芽細胞で増殖能、遊走能、接着能が亢進

 子宮内膜症は生殖年齢女性の約1割が発症し、骨盤痛、不妊症、がんなどを引き起こす。発症機序についてはさまざまな説が提唱されているものの、いまだ明らかになっていない。月経血の逆流が要因の1つとされ、ホルモン薬投与による偽閉経療法または手術による病巣切除が行われるが、副作用や再発などの課題がある。

 村岡氏らは今回、正常な子宮内膜線維芽細胞と子宮内膜症病変部の線維芽細胞の遺伝子発現プロファイルを解析。子宮内膜症病変部の線維芽細胞ではトランスジェリン(TAGLN)が高発現していた。TAGLNは線維芽細胞が活性化されて細胞収縮能や増殖能を獲得した筋線維芽細胞のマーカーであり、TAGLN陽性筋線維芽細胞において、子宮内膜症発症の重要な因子である増殖能や遊走能、腹膜中皮細胞への接着能の亢進が認められた。

 次に、TAGLNの発現誘導因子であるトランスフォーミング増殖因子(TGF)-βに着目。検討の結果、子宮内膜症患者の子宮内にはTGF-β産生細胞であるM2マクロファージが有意に高浸潤していることが示された。さらに、子宮内膜微小環境内の細菌叢を解析したところ、M2マクロファージが高浸潤する子宮内膜症患者の子宮内ではFusobacteriumが有意に多かった。

 そこで、Fusobacterium子宮内膜症病変形成への関与について、子宮内膜症モデルマウスを用いて検討を実施。子宮内膜症モデルマウスをFusobacteriumに感染させると、子宮内膜症病変の形成が有意に促進され、抗菌薬投与により内膜症病変の形成が抑制されることが示された。

 同氏らは「Fusobacterium感染により子宮内膜の微小環境が変化し、最終的にTAGLN高発現の線維芽細胞が増殖することが子宮内膜症の発症メカニズムにおいて重要な要素であることが示され、抗菌薬投与が新規治療法になりうることが示唆された()」と結論。現在、同科で特定臨床研究を進めているという。

図. 子宮内膜症の発症メカニズム

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(名古屋大学プレスリリースより)

(編集部)