政府が創設する「こども誰でも通園制度」は、未就園児にも保育士が関わることで、親の育児疲れや孤立化を防ぐ狙いがある。ただ、入れ替わり立ち替わり登園する子どもの性格を把握して、一人ひとりに合った対応を取るのは負担が大きい。保育士の人材不足も続いており、預かる子どもが増えれば現場の混乱も予想される。
 こども家庭庁によると、2021年度時点で0~2歳児の約6割に当たる146万人が未就園。親が自宅で子どもと向き合い続けて疲弊したり、誰にも悩みを打ち明けられなかったりする問題が指摘されている。家庭内のため、虐待や障害といった課題を抱えていても発見が遅れがちだ。
 誰でも通園制度は、こうした家庭にも支援を行き渡らせるのが狙いだ。制度を利用して親がリフレッシュしたり、保育士から助言を受けたりできる。子どもにとっても集団遊びの経験は発育への効果が期待できる。
 これまでも「一時預かり」という類似の事業はあったが、利用のたびに申し込みが必要で手続きが煩雑。施設側の整備も進まず、同庁によると、未就園児1人当たり年間約3日分しか確保されていないという。
 今年度は、保護者が保育所に事前登録することで毎回の手続きを省き、定期利用しやすくしたモデル事業を実施。保育士の人件費として自治体に500万~600万円の補助金を支給する。同庁は効果を検証した上で、誰でも通園制度を設計する方針だ。
 ただ、毎日通う園児と週に数回しか来ない未就園児を一緒に預かると、子ども同士の関係づくりは通常以上に難しくなる。保育士の人手不足も深刻だ。今年1月の有効求人倍率は3.12倍で、全職種平均の1.44倍より高い。政府は誰でも通園制度の開始後も、モデル事業と同様に保育士の人件費を補助する方針だが、特に求人倍率の高い都市部では保育士の取り合いが起きる懸念もある。 (C)時事通信社