オーストラリア・Deakin UniversityのImogene Smith氏らは、パートナーの予期せぬ妊娠・出産により父親となった男性の子育て初期におけるメンタルヘルスについて検討した研究23件8,085例のシステマチックレビューとメタ解析を実施。その結果、予定された(希望した)妊娠により父親となった男性との比較において、予期せぬ妊娠により父親となった男性ではなんらかのメンタルヘルスの問題が発生するリスクが有意に高かったとJ Affect Disord2023; 339: 22-32)に発表した。

望まない・計画外・予定より早い妊娠と希望した妊娠を比較

 予期せぬ(unintended)妊娠〔望まない(unwanted)、計画外(unplanned)、予定より早いタイミング(mistimed)〕は、両親のメンタルヘルス悪化の危険因子の1つだが、男性(父親)を対象に検討した研究は極めて少ない。

 そこでSmith氏らは、医学データベースMEDLINE、CINAHL、Academic Search Complete、PsycInfo、EMBASEに2022年2月2日までに収載された英語の研究を検索。生後36カ月までの子を持つ父親8,085例のメンタルヘルスを評価した研究23件を特定し、ランダム効果モデルによるメタ解析に組み入れた。

 評価対象のうつ病(19件)、不安(2件)、ストレス(2件)、心的外傷後ストレス障害(PTSD、1件)、アルコール乱用(1件)、育児ストレス(1件)、うつ病と不安の複合(1件)を全て合わせた、なんらかのメンタルヘルスの問題が発生するリスクは、希望した妊娠により父親となった男性との比較において予期せぬ妊娠により父親となった男性で有意に高かった〔オッズ比(OR)2.28、95%CI 1.70~3.06、研究間の異質性のτ2=0.235、I2=76.30%、P<0.001〕。

うつ病のオッズは母親より高リスクの2.36倍

 うつ病に限定した解析でも、予期せぬ妊娠による有意なリスク上昇が認められた(OR 2.36、95%CI 1.70~3.28、τ2=0.34、I2=82.93%、P<0.001)。女性(母親)のうつ病リスクを検討した研究30件6万5,454例のメタ解析(J Psychosom Res 2020; 138: 110259)の結果(OR 1.53)と比較すると、父親の方がより高リスクであることが示唆された。

 一方、パートナーの予期せぬ妊娠と不安(OR 1.64、95%CI 0.71~3.78、P=0.247)、ストレス(同1.65、0.64~4.26、P=0.303)のリスクとの有意な関連は認められなかった。ただし、これらを検討した研究は2件のみで、1件は平均年齢が35.6歳と最も高く教育水準も高い男性が対象、もう1件は母児がまだ医療支援を受けている産後4日間に評価が行われていた。そのため、Smith氏らは「結果の解釈には注意が必要」と指摘している。

 サブグループ解析では、パートナーの予期せぬ妊娠と父親のメンタルヘルス悪化との関連は、高所得国(OR 1.78)よりも低・中所得国(同4.44)で有意に強かった(P=0.001)。

 一方、出産歴(第一子か第二子以降か、P=0.891)、うつ病の評価方法(P=0.465)による有意差はなかった。また、メンタルヘルスの評価時点(0~3カ月、3~12カ月)による有意差もなく(P=0.181)、パートナーの予期せぬ妊娠の男性への影響は産後1年間持続する可能性が示唆された。

 同氏らは「父親のメンタルヘルスは母親のメンタルヘルスやパートナーとの関係、親子の絆、子の発達にも影響を及ぼすにもかかわらず、大部分の国では男性を対象にしたルーチンの周産期うつ病スクリーニングは行われていない」と指摘し、「出産前後のメンタルヘルスのスクリーニングは両親ともに必要」と付言している。

(太田敦子)