重症薬疹として知られるStevens-Johnson症候群(SJS)および中毒性表⽪壊死症(TEN)はそれぞれ致死率が4%、30%と予後不良の医原性疾患であり、予後改善のためには発症早期に重症度の層別化を行い、治療方針を迅速に決定することが極めて重要だ。しかし既存の予後予測スコアは実臨床では利用しにくい実態がある。新潟⼤学⼤学院⽪膚科学分野講師の濱菜摘氏らは、既往歴と皮膚所見のみでSJSおよびTENの予後を予測するスコアを開発。国内および海外の症例で検証したところ高い精度が確認されたとJ Allergy Clin Immunol Pract2023年7月8日オンライン版)に報告した。

血液検査不要、一般クリニックや途上国での活用に期待

 SJSおよびTENに対する既存の予後予測スコアSeverity-of-Illness Score for Toxic Epidermal Necrolysis(SCORTEN)は、開発されたのが20年以上前と古く最新の知見が反映されていない上、血液検査を要したり心拍数のような不安定な検査項目で構成されたりしており、実臨床で使いやすいとは言い難い。濱氏らは2016~18年に行われた全国疫学調査(J Dermatol Sci 2020; 100: 175-182)で得られたデータを基に、新たな予後予測スコアclinical risk score for SJS/TEN(CRISTEN)を開発した。CRISTENは、SJSおよびTEN症例の死亡危険因子のうち寄与度の大きい年齢(65歳以上)、糖尿病、心疾患、粘膜障害などの10項目を抽出し、各項目を1点として算出するもので、初診時の臨床所見と既往歴から簡便に死亡率が推定できる()。

表.CRISTENの10項⽬とスコア合計点数別の予測死亡率

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(新潟大学プレスリリースより)

 国内の症例382例でCRISTENの予測精度を検証したところ、ROC曲線下面積(AUC)は0.876(95%CI 0.830~0.923)と高い精度が確認された。さらに海外7カ国(スイス、ドイツ、フランス、台湾、韓国、英国、カナダ)の研究機関から得た416例のデータでも検証したところ、AUCは0.827(同0.776~0.879)と国内データと同等の精度を示し、海外での汎用性も確認できた。

 同氏らは「CRISTENは血液検査が不要であるため一般のクリニックや医療体制が整っていない開発途上国・地域でも簡便に使え、SJSおよびTEN患者に適切な医療ケアを提供するのに役立つ。今後は普及に努めるとともに、CRISTENによる重症度と連結したさらなる研究も進めていきたい」と意欲を示している。

(編集部)