日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会は8月31日、一部で齲蝕菌の感染予防に有用との見方もある乳幼児と親との食器共有に関して「意見」を掲載。「食器の共有をしないことで齲蝕予防できるという説の科学的根拠は必ずしも強いものではない」とし、児の齲蝕予防策として親による毎日の仕上げ磨きなどを勧めた。

口腔細菌感染は食器共有前から起こっている

 一般に、乳幼児と親の食器共有は離乳食開始時期に当たる生後 5~6カ月ごろから始まる場合が多いが、口腔細菌の親子間感染はそれ以前から生じていることが報告されている。乳幼児の4カ月健診時に448組の母児から採取した舌スワブ検体を解析した検討では、乳幼児と実母が共有する口腔細菌叢の相対存在量は中央値で9.7%(範囲0.0~99.3%)だった(mBio 2022; 13: e0345221)。

 また、3歳児3,035例の歯科検査結果と保護者に対するアンケートにより齲蝕の原因を見た検討では、食器共有と齲蝕に関連は認められなかった(Caries Res 2011; 45: 281-286)。さらに、親子の唾液接触により児のアレルギーリスクが低下するとの報告もある(J Allergy Clin Immunol Glob 2023; 2: 100108、関連記事「親子の唾液接触でアレルギーを抑制か」)。

フッ化物配合歯磨き剤の利用が効果的

 以上から日本口腔衛生学会は「食器共有を避けるなどの方法で口腔細菌の感染を防ぐことを気にしすぎる必要はない」と指摘。児の有効な齲蝕予防策として①砂糖の摂取を控える、②フッ化物配合歯磨き剤を利用する、③親が毎日仕上げ磨きをするーを推奨した。なお、フッ化物配合歯磨き剤については、今年(2023年)4月に同学会と日本小児歯科学会、日本歯科保存学会、日本老年歯科医学会が合同で「う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法【普及版】について」を発表している。

(平吉里奈)