日本心臓血管麻酔学会は9月27日、直接作用型第Xa因子阻害薬特異的中和薬アンデキサネット アルファ(商品名オンデキサ)の周術期投与に関する注意喚起を行った。ヘパリンによる抗凝固が必要な心臓血管外科手術などでアンデキサネット アルファを投与した場合、ヘパリン抵抗性が生じる可能性がある。同学会は推奨事項として3点を挙げた。

国内外で周術期のリスク症例が報告

 アンデキサネット アルファは2022年5月に国内で発売され、直接作用型第Xa因子阻害薬アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバントシルを投与中の患者において、生命を脅かす出血または止血困難な出血に対し抗凝固作用の中和薬として使用されている。

 2019年以降、海外において同薬投与によるヘパリン抵抗性発現の報告がなされ、日本でも今年(2023年)開かれた第28回日本心臓血管麻酔学会、第70回日本麻酔科学会などでヘパリン抵抗性例が6例報告された。

 心臓血管外科手術で人工心肺開始前または施行中にアンデキサネット アルファを投与した場合、ヘパリン・アンチトロンビン複合体や組織因子経路インヒビター(TFPI)の抑制による対応困難なヘパリン抵抗性が生じ、血栓症などの重大なリスクが高まる可能性が指摘されている(Nat Med 2013; 19: 446-451N Engl J Med 2015; 373: 2413-2424J Cardiothorac Vasc Anesth 2023; 37: 1332-1334)。

 これらの報告を踏まえ日本心臓血管麻酔学会は、直接作用型第Xa因子阻害薬投与中の患者に対する緊急の心臓血管外科手術施行時のアンデキサネット アルファ投与の注意点として次の3点を推奨。慎重な判断と対応を呼びかけてる。

  1. 人工心肺前または人工心肺中:予防投与における便益(出血の軽減)と危険(ヘパリン抵抗性、血栓症)を十分に評価した上で判断することを推奨
  2. 人工心肺離脱後:離脱後に再び人工心肺導入が必要となる可能性が低いことを確認し、ヘパリンの拮抗を行っても止血が困難な場合のみ投与を考慮することを推奨。その際、出血の増悪因子(外科的出血、低フィブリノゲン血症、ヘパリン残存など)がないことを確認
  3. ヘパリン投与を要する心臓血管外科手術・処置:アンデキサネット アルファ投与による患者の不利益について、各施設の心臓血管外科、循環器内科、救急科などの関連診療科および体外循環技士、薬剤師などと情報共有し慎重な対応を検討することを推奨

 なお、アンデキサネット アルファは「アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバントシル酸塩水和物投与中の患者における、生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発症時の抗凝固作用の中和」を効果・効能としている。

(渡邊由貴)