フランス・Centre Hospitalier Universitaire ToulouseのClémence Picard氏らは、小児の急性虫垂炎に対するアモキシシリン・クラブラン酸配合薬(AMPC/CVA)による非手術的治療の有効性を検討するため、急性虫垂炎で入院した小児104例を対象に後ろ向き研究を実施。その結果、小児の急性虫垂炎に対するAMPC/CVAの初期奏効率は100%、2年後の奏効率は85.6%と良好な成績であり、手術の代替治療になりうるとBMJ Paediatr Open2023; 7: e001855)に報告した。

小児虫垂炎に対する抗菌薬の推奨は未確立

 急性虫垂炎に対しては一般的に切除術が行われるが、5〜15%で周術期合併症が起きるとされる。一方、小児虫垂炎に対する非手術的治療の奏効率は65〜95%との報告があるが、用いられている抗菌薬の大部分は広域スペクトラムであり、小児虫垂炎治療における適切な抗菌薬の種類と用法用量の推奨は確立されていない。

 Picard氏らは今回、経口投与への切り替えが容易かつ狭域スペクトラムのβ-ラクタマーゼ阻害薬配合薬であるAMPC/CVAの小児急性虫垂炎に対する有効性を明らかにするため、単一施設の後ろ向き横断研究を実施した。

 対象は、2018年1月1日~12月31日にフランス・Children Hospital of Toulousに急性虫垂炎で入院し、AMPC/CVA(80mg/kg/日:48時間静脈内投与後、7日間経口投与)による治療を受けた5〜15歳の小児104例〔男児62%、年齢中央値10歳、四分位範囲(IQR)8〜11歳〕。選択基準は、①腹痛を有する初発の急性虫垂炎、②X線や超音波検査で結石、穿孔、骨盤膿瘍、腹膜炎の所見がない、③敗血症でない―とした。

 主要評価項目は、AMPC/CVAによる治療から2年後の奏効率とした。

胸水、追跡時の超音波所見、症状持続も治療失敗と関連

 解析の結果、AMPC/CVAによる初期奏効率(腹痛が消失し、虫垂切除を行わずに退院)は100%(104例中104例)。入院期間の中央値は3日(IQR 3〜4日)だった。

 AMPC/CVAによる治療から2年後の奏効率は85.6%(89例中104例)だった。治療後2年間に虫垂炎が再発し、切除術を受けた割合は14.4%(15例中104例)で、初回入院日から虫垂切除までの期間の中央値は82日だった(IQR 55〜233日)。切除術を受けた15例に腹膜炎、穿孔、骨盤膿瘍を認めた者はいなかった。

 治療が成功した群と失敗した群で、年齢、治療開始日と2日目の疼痛スケール、最高体温、C反応性蛋白(CRP)値、血球数、AMPC/CVAの投与経路と投与期間、入院期間などに有意差はなかった。

 一方、超音波検査による虫垂の直径中央値は、失敗群の8mm(IQR 7.2〜9.5mm)に対し、成功群では7mm(同7〜9mm)と有意差が認められた〔オッズ比(OR)1.4、95%CI 1.0〜1.8、P=0.02〕。治療の失敗と関連するその他の因子として胸水の存在(同3.9、1.3~12.6、P=0.02)、追跡時の病的な超音波所見(同6.7、2.1~21.9、P=0.002)、症状の持続期間(同1.3、1.0~1.8、P=0.01)が抽出された。

 以上を踏まえ、Picard氏らは「小児虫垂炎に対するAMPC/CVAによる治療は、広域スペクトルの抗菌薬と比較して初期、2年後ともに良好な奏効率を示し、切除術の代替治療になりうることが示された」と結論。既報では、成人例において切除術に対する非劣性が証明されていないことから(Lancet 2011; 377: 1573-1579)、「より大規模な研究で有効性を確認すべきである」と付言している。

(今手麻衣)