乾癬の発症メカニズムにおいては、炎症性サイトカインが重要な役割を担うと考えられている。健康対照者に比べ乾癬患者では幾つかの炎症性サイトカインの血清中濃度が上昇しており、それらのサイトカインが乾癬リスクに関連するとの報告があるものの、いずれも小規模の研究のため確定的なエビデンスは得られていない。中国・The Second Hospital of Hebei Medical UniversityのXiao-Qing Liu氏らは、炎症性サイトカインと乾癬リスクの関連を評価する目的でシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。乾癬に関連する複数の炎症性サイトカインが明らかになったとPLoS One2023; 18: e0293327)に発表した。

11種の炎症性サイトカインに注目

 Liu氏らは2023年1月までにPubMed、EMBASE、Cochrane Library、Web of Scienceに公表された文献から、循環炎症性サイトカインと乾癬の関連を検討した臨床研究論文を検索した。対象とした炎症性サイトカインは、インターロイキン(IL)-2、IL-4、IL-12、IL-17、IL-18、IL-22、IL-23、IL-35、IL-36、インターフェロン(IFN)-γ、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β。炎症性サイトカインと乾癬の関連を評価するための指標として、乾癬患者と健康対照者の炎症性サイトカイン濃度の標準化平均差(SMD)および95%CIを用いた。

 メタ解析への組み入れ基準は①症例群は半月以上全身治療を受けていない成人乾癬患者(18歳超)、または乾癬以外の全身性免疫系疾患に罹患している患者であること、②研究は臨床研究(症例対照研究、横断研究、コホート研究)であること、③炎症性サイトカインの測定指標が末梢血清または血漿中濃度で、平均±標準偏差(もしくは平均±標準偏差に変換可能であること)でデータが表示されていること、④同じ著者による重複する報告が見つかった場合、最新の発表研究データを使用すること−とした。

IL-2、IL-17、IL-18、IFN-γが乾癬と有意に関連

 最終的に57件・2,838例がメタ解析の対象となった。57件のうち、評価項目に含まれた炎症性サイトカインとして最も多かったのがIL-17(11件)で、以降IFN-γ(7件)、IL-23、IL-2(各6件)、IL-12、IL-18、IL-22(各5件)、IL-4、TGF-β(各4件)、IL-12、IL-35(各2件)の順であった。

 SMDで評価した炎症性サイトカインと乾癬の関連の度合いは、研究間で高い異質性が認められた。IL-2を例に取ると、I2=93.1%(P<0.001)であった。そのため、変量効果モデルを用いて分析することとした。その結果、統合SMDは1.29(95%CI 0.61〜1.97、P<0.001)であり、IL-2濃度は健康対照者に比べ乾癬患者で有意に高いことが示された。

 その他の炎症性サイトカインについても同様に検討した結果、IL-17(統合SMD 0.71、95%CI 0.12〜1.30、P=0.018)、IL-18(同1.27、0.64〜1.90、P<0.001)、IFN-γ(同1.90、1.27〜2.52、P<0.001)の血清中濃度と乾癬に有意な関連が認められた。一方、IL-4、IL-12、IL-22、IL-23、IL-35、IL-36、TGF-βについては、乾癬との間に明らかな関連は認められなかった。

 Liu氏らはまた、研究間での高い異質性の根源を探る目的でメタ回帰分析およびサブグループ解析を実施。すると、IL-17に関しては乾癬のタイプが影響していることが示された。すなわち、尋常性乾癬を対象にIL-17との関連を検討した試験間では異質性が見られなかったものの(I2=0%)、尋常性乾癬以外のタイプを対象とした試験間では高い異質性(I2=97.5%)が確認された。

乾癬のタイプにより関連する炎症性サイトカインが異なる?

 以上からLiu氏らは、「IL-2、IL-17、IL-18、IFN-γの血清中濃度の上昇は、乾癬と有意に関連することが示された」と結果をまとめた。

 同氏らは研究の限界として①対象となった地域、人種、乾癬のタイプが限定的である、②使用した測定キットが研究間で異なったため、異質性が増した可能性がある、③元の研究データが不完全で、より包括的な結論に達することができなかった−ことなどを挙げる一方で、IL-2、IL-17、IL-18、IFN-γが乾癬の強力なバイオマーカーになりうることを明らかにした意義は大きいと指摘した。さらに、サブグループ解析で乾癬のタイプにより関与している炎症性サイトカインが異なる可能性が示された点に触れ、この問いを探求するには、広範な地理的・文化的地域において、さまざまな乾癬タイプを含めた十分なサンプルサイズの大規模研究が必要であるとの見解を示した。

 同氏らは「炎症性サイトカインは血液サンプルで比較的簡便に測定可能であることから、積極的に検査を行い、自己免疫疾患における作用メカニズムに関する研究に利用するべきである。それが乾癬リスクを減少させる方法の発見につながり、乾癬患者の予後評価に役立つ新たな指標を提供できる可能性がある」と展望している。

(編集部)