青森市が発注した新型コロナウイルス感染者を宿泊療養施設などに移送する事業の入札で、事前に落札業者を決める談合を繰り返したとして、公正取引委員会は15日、独禁法違反(不当な取引制限)容疑で、大手旅行会社近畿日本ツーリスト(東京都)の青森支店など5社9カ所を立ち入り検査した。関係者への取材で分かった。
 新型コロナ関連の公共事業を巡り、公取委が立ち入り検査するのは初めて。感染拡大で旅行需要が落ち込む中、大手各社が談合で利益の確保を図った可能性があるとみて全容解明を進める。
 関係者によると、他に公取委が立ち入り検査したのは、JTB(東京都)や東武トップツアーズ(同)、日本旅行東北(仙台市)、名鉄観光サービス(名古屋市)の各青森支店など。
 青森市が2022年4月~23年3月に実施した5件の指名競争入札では、いずれも近畿日本ツーリスト青森支店が落札した。JTBと日本旅行東北も入札に加わる一方、東武トップツアーズと名鉄観光サービスは参加しなかった。
 各社の支店長クラスが事前に入札価格などを相談し、近畿日本ツーリストは落札しなかった各社にも下請けとして仕事を分配したとみられる。
 青森市によると、近畿日本ツーリストの落札額は総額約3200万円。最初の入札では予定価格に対する落札率が75%程度だったが、その後の4回は90%を超えていた。JTBと日本旅行東北は初回が失格、残りの4回は近ツーより高値での入札を繰り返していた。
 取材に対し、近畿日本ツーリストは「立ち入り検査を受けたのは事実。調査には全面的に協力する」とコメント。日本旅行東北は「立ち入りは事実だが、詳細を知らされていないためコメントできない」と回答し、名鉄観光サービスは「調査に協力していく」とした。
 西秀記青森市長の話 事実なら重大な事態であると認識しており、公取委の検査を注視していく。 (C)時事通信社