岸田文雄首相が12日、来年秋に現行の保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に移行する方針を改めて表明した。医療機関や高齢者からは「国民の理解が進んでいない」などと懸念の声が上がる一方、「便利になる」と賛成する意見もあった。
 東京都文京区の細部小児科クリニックではマイナンバーカードの読み取り機を設置しているが、利用する人は月に1~2人程度。ポイント目当てでカードを作ったが「使っていない」との声も聞くといい、細部千晴院長(61)は「国民の理解は進んでいない。来秋と期限を決めることは明らかにずさんだ」と話す。
 高齢者が多く集まる東京・巣鴨。買い物に訪れた松山信さん(83)は「通っている病院などを把握されるとプライバシーまで知られてしまいそう。紙の(保険証の)方が便利で楽」と不安を口にする。一方、既にマイナ保険証を使っているという沖縄県の50代女性は「財布にいろいろなカードを入れるから大変だったが、マイナ保険証で楽になった」と歓迎した。
 大阪・梅田を歩いていた大学4年の女性(21)も「せっかくマイナンバーカードを作ったのに使う機会がない。情報を全部移したら便利だと思う」と賛成の立場。会社員の女性(25)は「コンビニで手続きができて便利」と評価しつつ、「それ以外のメリットは実際感じていない。高齢者も困るだろうし、完全に保険証をなくさなくても良いのでは」と語った。 (C)時事通信社