スウェーデン・Lund UniversityのNiklas Mattsson-Carlgren氏らは、抗アミロイド免疫療法(抗アミロイド抗体医薬)の適応となるアルツハイマー病(AD)患者のスクリーニングに役立つ血液マーカーを模索した結果、「血漿リン酸化タウ蛋白質(p-tau)217が最も有用であった」とJAMA Neurol(2023年12月4日オンライン版)に報告した。

抗アミロイド療法はAβ陽性でタウ蓄積量の低い患者に適する

 抗アミロイド免疫療法の登場により、AD診療に大きな変化が期待されている。一方、高い薬価や副作用、限られた臨床効果を考えると、最大のベネフィットを得られる患者の選択が重要になる。donanemabのTRAILBLAER試験では、認知機能障害を有し、タウ蛋白質の蓄積量が多い患者では効果に乏しいことが確認されている。

 Aβやタウ蛋白質の正確な検出にはPETや脳脊髄液(CSF)検査が必要だが、これらの検査には高額、利用できる施設が限定、侵襲的といったハードルがある。そこでMattsson-Carlgren氏らは、BioFINDER-2試験のデータを用いてJAMA 2020;324:772-781)タウ蛋白質蓄積とアミロイドβ(Aβ)病理を有する患者(Aβ陽性患者)の同定にフォーカスした血液マーカーを探索した。

p-tau217でAβ陽性の大半を同定可能

 Mattsson-Carlgren氏らは、2017年4月~22年3月にBioFINDER2に登録された主観的認知機能低下(SCD)、軽度認知症認知症の912例(男性499例、女性413例、平均年齢71.1歳)を訓練セット(80%)とテストセット(20%)に分け、血漿マーカー(p-tau181、p-tau217、p-tau231、N-末端タウ、グリア線維性酸性蛋白、ニューロフィラメント軽鎖)のデータと、PETまたはCSFによるAβ所見やタウ所見との一致率を検討した。

 その結果、血漿p-tau217がAβ陽性と最も強く関連することが確認された〔テストセットの曲線下面積(AUC) 0.94、95%CI 0.90~0.97〕。Aβ陽性/陰性を分けるp-tau217のカットオフ値を2カ所に設定し、グレーゾーンに位置する約17%の患者について、CSFまたはPETを施行しAβを再評価したところ、全体的な感度は94%(95%CI 90~98%)、特異度は86%(同77~95%)となった。

タウ蓄積量についてもPET所見と高い一致率

 次にさまざまな血漿マーカーを使って、Aβ陽性者におけるPETによるタウ蛋白質蓄積量を低~中等度/高度に分類したところ、ここでも血漿p-tau217が最も高い一致率を示した(AUC 0.92、95%CI 0.86~0.97)。他のバイオマーカーを加えても、それ以上の改善は得られなかった。

 以上の結果を踏まえ、Mattsson-Carlgren氏らは「血漿p-tau217をアルゴリズムに組み入れることで、タウ負荷が高い者も含めて、Aβ陽性者の大半の同定が可能である」と結論。「血漿p-tau217の測定により、侵襲的で費用が高いCSF検査やPETを頻回に行わなくても、抗アミロイド療法の恩恵を受けられる患者が同定できる可能性がある」と付言している。

木本 治