「歯科医院でしか買えない」歯ブラシや歯磨き粉、洗口液の市場が拡大している。ドラッグストアなどで購入するのと違い、口腔(こうくう)内の状態に合ったケア製品を歯科医や歯科衛生士に選んでもらえると好評だ。製品によっては一般流通品よりも薬用成分が多く配合されており、各メーカーは虫歯や歯周病を予防したいニーズに合致すると歯科医院に売り込んでいる。
 日用品メーカーの調査によると、歯科医院で販売される口腔ケア製品は2022年度の売上高が推計で約291億円。18年度の約228億円から4年で3割近く増えた。
 一般用洗口液「モンダミン」を製造・販売するアース製薬は、歯科医院向け製品を手掛ける事業部を20年に新設し、営業を強化した。19年に1億円に満たなかった売上高は毎年倍増ペースで伸び、23年には9億円を超えた。担当者は「歯科衛生士が患者に薦めたくなるような商品を作りたい」と意気込む。
 ライオンの子会社で歯科医院向け製品を専門に扱うライオン歯科材(東京)は、歯磨き粉を中心に販売が好調で、23年の売上高は前年から約5%増えた。歯磨き粉メーカーのサンギ(同)も一般品より虫歯予防の成分量を増やした歯磨き粉の売れ行きが伸びているという。
 各メーカーは、症状が悪化する前に予防目的で受診するケースが増えていることが歯科医院限定品の販売増につながっていると分析。高輪歯科(東京都港区)の加藤正治院長も「予防を重視し、患者に合ったケア製品を処方する歯科医院が増えてきた」と話している。 (C)時事通信社