水俣病認定を巡り熊本地裁が原告全員の請求を棄却した22日、弁護士が地裁前で「不当判決」の垂れ幕を掲げると、集まった原告や支援者から「なんで」「えー」と戸惑いの声が上がった後、沈黙が広がった。15年ほど前から手足のしびれに悩まされている熊本県水俣市の伊藤みどりさん(55)は「無念。悔しい。全ての力が抜けた」と涙を流した。
 判決後、熊本市内で開いた記者会見で、森正直原告団長は「耳を疑った。『全員棄却』。信じられない言葉だった」と怒り顔。「全然納得ができない。怒りを通り越した判決だった」と語気を強めた。
 原告の藤下節子さんは、10代から手足のしびれを感じ、56歳で水俣病と診断された。判決でも水俣病と認められたが、除斥期間で賠償請求は棄却された。「頭が真っ白で、(裁判の)途中、耳に入ってこなかった」と藤下さん。「(発症当時は)水俣病と思っていなかった。除斥期間の意味が分からない」と強く批判し、「全員救済してほしかった」と訴えた。
 原告の中村房代さんは「頑張れるすべがあれば、弁護士の先生や多くの人たちと力を合わせて頑張りたいと思います」と決意を新たに。支援者らからは大きな拍手が湧き起こった。 (C)時事通信社