足の悩み、一挙解決
最終回 爪トラブルの原因は「隠れ扁平足」
~適合したインソールで再発防止~ 足のクリニック表参道院長 桑原靖
崩れた状態の足型を取ってインソールを作っても、アーチへの矯正力はありません。ですので、この型を取るプロセスがインソールの出来を左右すると言っても過言ではありません。
足は立体的な構造物ですから、3次元で型を取らなければ、効果のあるインソールは作れないのです。
石こう型をもとに、医師がその人に合った素材や形を処方して、義肢装具士がインソールを作製します。
アーチを支える部分はプラスチックやカーボン、発泡素材などで、その厚さや素材を使い分けながら、個々に合った硬さを調整します。
◇骨盤が立ち、正しい姿勢に
約2週間後にインソールが完成し、さっそく使ってもらいました。
インソールのない状態で負荷をかけると、踏ん張れずに、すぐによろけていましたが、インソールの上に足を乗せると、負荷がかかっても、ビクともしなくなりました。
上は完成したインソール。下は床に置いたインソールに足を乗せた状態。しっかりとアーチを支えているのが分かる
骨盤が立つようになったことで、上半身が無理なく正しい姿勢を取れるようになっています。
アーチを支えるというと、かなり高く持ち上げるように思われがちですが、あまり高くすると過矯正になり、逆効果です。
また、インソールは足に無理のない靴に入れることで、治療効果を発揮するものなので、ヒールの高い靴やサンダル靴などではうまく適合しません。
◇健康な爪が生えてきた
最初は物足りないと感じるくらいでも、歩いてみると違いが分かります。
中には、使い始めのうちだけ、太ももの裏辺りが筋肉痛になる人もいます。
Aさんの場合、インソールを使う前は、歩くときにつま先が外を向いていましたが、使用後は真っすぐ前向きになりました。
親指で地面を踏んで、踏み返せるようになったため、楽に前に進みやすくなっています。
インソールを使い始めて3カ月後には、健康な爪が生えてきました。Aさんは「どこへ行っても改善されなかった長年の痛みから解放された」と、大変喜ばれました。
インソールを使い始めて3カ月後、健康な爪が生えてきた
◇連載を終えるに際して
2013年に足のクリニックを開院して以来、実に多くの患者さんの足の悩みと向き合ってきました。
改めて感じるのは、足の不調で困ったときに、すぐにかかれる足専門の医療機関が日本にとても少ないということです。
医学部教育では、重度な糖尿病の合併症である足潰瘍などを学ぶ機会はありますが、重症化する前のプライマリーケアでの対応は遅れています。
一方で、医療現場においては、関心を持って取り組む、さまざまな科の医師がいても、医療法上、「足科」と標ぼうすることができません。
日本の医療は、患者さんが自らの症状から受診する診療科を選び、それを標ぼうしている医療機関を受診するというシステムです。
このため、足にトラブルのある患者さんは、その症状によっては、どこの何科へ行ったらよいのか分からないという問題に直面してしまいます。
もし仮に「足科」と標ぼうしている医療機関があれば、患者さんも遠回りせずに受診することが可能で、適切な医療を受けることができるのだと思います。
私自身はクリニックで自分のできることを少しずつ、できるだけ長く続けていきたいと思いますが、診られる患者さんの数にも限りがあります。
もっと多くの患者さんが、足の不調を感じたとき、気軽にかかれるような医療機関が増えてくれることを期待して、この連載を終えたいと思います。長期にわたってご高覧頂き、有難うございました。
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(2019/05/06 10:00)