Dr.純子のメディカルサロン

敏感過ぎるあなた
~繊細な自分に悩んでいませんか~ 第32回

 この数年、「自分は過敏だから生きにくい」という悩みを聞くことが多くなりました。特に企業にお勤めの方で、上司や同僚の言葉がずっと気になってしまったり、人の表情の変化で自分が悪く思われているのではないかと気になったりしてしまうという悩みです。

 同僚の医師の話を聞くと、やはり、そうした訴えの方たちが最近、多いということでした。過敏な気質を見分けるチェックリストをインターネットで検索し、「自分はこれに当てはまるから生きにくいのだ」という人もいます。

混雑する通勤電車

混雑する通勤電車

 ◇敏感な人が生きにくい現代

 現代は敏感だと生きにくいことは確かです。繊細で、人の表情のわずかな変化を察知する敏感さや、つらい思いをしている人への共感性に富む性格傾向などは、現代社会では傷つきやすいことは確かです。

 混雑した通勤電車は騒音にあふれ、自分の自由に動けるスペースはなくなりますし、社内でのパワハラ寸前の言葉は、相手の想像を超えて、心に突き刺さるものです。

 ただ、気を付けなければならないのは、敏感さを病気として捉えてはならないということです。

 もちろん、過敏や敏感が何らかの疾患により起こることはあります。例えば、適応障害でうつ状態になっている場合や、うつ病の場合などです。

 背景に、そうした疾患がある場合は、疾患の治療をしていくと、過敏状態は改善しますし、疾患による過敏は治療を受ける必要があるでしょう。

 ◇「敏感」は病気ではない

 しかし、その人の持つ特性として、敏感さや繊細さがある場合は、病気ではないので、それに気が付いた上で、自分の居場所をつくる方法を考えていかないと、ストレスがたまってしまいます。

 こうした方は、自分が受けた言葉だけでなく、人がつらい思いをしている事でも傷つくことがあるからです。

 30代の女性の例ですが、同じチームの上司が仕事のクライアントに、ひどい言葉を浴びせられるのを一緒に聞いていて、自分が言われているかのような思いに陥り、調子が悪くなってしまったといいます。

 共感性があるために、自分が疲れてしまうことがあるのです。といっても、敏感に感じる人が鈍感になることはできませんし、感じないように感情を抑圧するのも良くはありません。

 では、敏感さを持ちつつ、どのように居場所を見つければいいのかを考えていきましょう。

 ◇敏感な人が心地よく生きていくための対策

 1. こんな場合は受診を

 まず、その過敏な状態に疾患が隠れていないかについて受診します。

 敏感さがもともとでなく、環境の変化をきっかけにして起こったり、敏感さだけでなく、睡眠障害や食欲変化など、他の心身の変化を伴ったりする場合、また、感情のコントロールが難しく、すぐに涙が出てしまうような場合は、受診してください。

 2.パーソナルスペース・タイムの確保

 刺激を避けて、1人で静かに過ごせる時間と場所をつくり、1日20分間、過ごしましょう。

 自然と関われる場がベストです。外界の刺激から離れて、呼吸を整えると、気持ちが落ち着きます。鼻呼吸で吸う息の倍の時間を吐く、という呼吸法を行うと、自律神経の調整ができます。

 過敏になっているときは、交感神経が緊張し、「戦うか、逃げるか」態勢になっています。このストレス状態を緩めるには、静かな場所で刺激をなくし、緊張を緩めることが不可欠です。

 仕事が終わったときは、スマホを見ないで、パーソナルタイムをつくってください。

 3.揺れる気持ちを表現する場をつくる

 言葉や表情で傷ついたとき、その気持ちを抑え込まずに表現する場をつくることです。

 私がお勧めしたいのは、専用の小さなノートをつくり、それに気持ちを書いておくことです。

 抑え込んでしまうと、それがたまり、ストレス状態になり、体調を崩す要因になります。

 また、人に話しても分かってもらえないことが多いので、かえって疲れてしまうものです。

 「そんなことくらいで悩むの?」などと言われると、かえって傷つきます。

気付きは接客業の基本。写真は高齢者に商品の案内をするハンバーガー店の店員(左)

気付きは接客業の基本。写真は高齢者に商品の案内をするハンバーガー店の店員(左)

 書くことで表現し、また、それを後で読み返すと、自分の気持ちを客観的に認知することができ、それによって、何らかの気付きが出てくるものです。

 後で読み返したときに感じたことを、また書いてみてもいいと思います。

 4.敏感さを生かす方法を

 敏感さは仕事で不要なことでしょうか。そうではないはずです。人の思いに敏感で、人の痛みを理解したり、人が何を求めているかを察知できたりする能力は、仕事で不可欠です。

 あなたの職場に、敏感さについて、理解がある上司や、管理職がいないか、探してみてください。そうした上司は、敏感なセンスを持つ部下を認めてくれるはずです。

 敏感さや共感性が必要とされる職種では、その特性が生かせて自己肯定感が生まれると思います。

 敏感さが損だと思うのではく、敏感で良かったと思える職種、あるいは、職場の中で敏感さを必要とされる場を探してみることも大事かもしれません。

(文 海原純子)



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