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1型糖尿病患者の医師がセミナー
体験踏まえ、治療のトレンド紹介

 愛生会山科病院の神内謙至・糖尿病内科部長は、15歳、中学3年で発症。母も1型糖尿病だ。「『超速効型インスリン』と呼ばれる製剤の登場により難しい血糖値のコントロールが改善され、ポンプとCGMによってそれがさらに進んだ」と言う。

 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センターの黒田暁生准教授は、12歳の時に発症し、37年になる。「2004年の米国留学時からポンプを使っており、推奨している。13年にCGMの装置を個人で輸入したが、使い勝手は良かった」と話した。

発言した医師らも1型糖尿病患者

発言した医師らも1型糖尿病患者

 ◇治療で合併症は心配なし

 糖尿病は合併症が怖いといわれる。しかし、南院長は「私たちのクリニックの患者には、今の治療をきちんと続けていれば合併症は起きない、と説明している」と発言、同時に、「子どもが保育園に入ることができない。会社で病気のことを理解されない」などと社会の理解が不足している点を指摘し、周囲の環境がもっと良くなれば患者が過ごしやすくなる、と強調した。

 神内部長は「1型は一見、健康そうに見える。今ではだいぶ社会的に認知されてきたと思うが、30年以上前は全く知られておらず、ペン型注射器もなかった」と振り返る。 昼食前後に低血糖に陥りやすく、「補食」をしなければならない。「早弁」をするなど、工夫しながら血糖コントロールしていた、という。後に、けげんに感じていた友人に病気のことを話すと納得した。「職場でも言える人と、言えない人がいるだろう。社会的な対応が重要だ」と訴えた。

 ◇怖いのは低血糖

 危険なのは低血糖だ。黒田准教授は「初診の患者は、合併症を気にする傾向がある。ただ、気を付けたいのは低血糖だ。例えば、低血糖状態で車を運転して事故を起こし、一生を失うことにもなりかねない」と警鐘を鳴らす。

 黒田准教授によれば、徳島大学での糖尿病患者の約85%は1型だ。1カ月に1回、慢性的な高血糖状態を診断するための指標となる「ヘモグロビンA1c」を測定する。「これ以上、指導することもないのにと思うほど状態が安定している患者もいる」という。大村さんも「ヘモグロビンA1cを下げよう、下げようとして低血糖を招く。1型と2型は違う。糖尿病全体への理解を広めてほしい」と話した。

 車の運転が趣味という加藤科長も「乗る前に血糖値を測定する。運転中にCGMにより血糖値が下がってきたことが分かれば、少し休憩してジュースなどを飲むようにしている」と語った。

現役選手時代の大村詠一さん

現役選手時代の大村詠一さん

 ◇スペシャリスト育成を

 治療機器は進歩しているが、課題もある。黒田准教授によると、他の医療機関を経てきた患者のインスリンポンプのセッテイングがひどいケースがある。「こちらから患者を紹介する場合は、信頼できる医師に事前に連絡を取って紹介する」と述べるとともに、「もっと治療のスペシャリストをつくっていかなければならない」と強調した。

 大村さんは「超速効型インスリンを打ってから効くのに、15分くらいかかる。健康な人たちと同じ時間に食事を始められたらよいのになあ、と思う」と日常生活の不便に言及。黒田准教授は「今のところ、15分前に打つのは仕方がない。もっと早く効果が出る製品の研究・開発を期待している」と述べた。(鈴木豊)

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