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第11回 事業承継、人それぞれの成功例
【開業医のためのクリニックM&A】 岡本雄三税理士事務所・MARKコンサルタンツ代表 岡本雄三

 ◇「困っている人のために」

 結局、H医師が自分の目指すスタイルがあるということで、従業員の大半は入れ替えになりました。事業主都合による解雇になる従業員については、G医師が次の就職先を世話する形でフォローしました。

 さて、M&A後のG医師の様子ですが、先日メールが届きました。今は準備期間として、民間の病院で代務などをしながら勤務医として過ごしているとのこと。勤務医としての引き合いは多く、十分な収入も得られているようです。

 今後、さまざまな準備が整い次第、医療ボランティアとして世界に羽ばたいていくことでしょう。

 こうして、第2の活躍の舞台に向けてまい進するG医師の姿を知るにつけ、「お手伝いができて良かった」との思いを強くします。志の高い医師と関わることができた経験は、私どもの誇りになります。

 「医師というのは本来、患者のために存在するもの。困っている人のために100%の力を使うことができれば、それが医師にとっての幸せなのだ」というG医師の言葉が忘れられません。

事例4

 ◇十数年前にM&A

 別の事業継承のストーリーをご紹介しましょう。

 I医師は、十数年前にM&Aでクリニックを承継している先生でした。十数年前といえば、業界でもまだクリニックM&Aがほとんど知られていない時期でしたから、「先駆け的存在」と言えるでしょう。私はその時からのお付き合いでした。

 当時のM&Aの経緯は、院長が急に亡くなって、しばらく閉院していたクリニックを、開業希望だったI医師が買い取って、診療を再開する形式でした。

 1階がクリニック、2階が住宅の造りになっていて、その全てを不動産売買して手に入れました。

 もともと、地域で多くの患者さんを診ていたクリニックだったこともあり、経営的には、初年度から5000万円を超える所得がありました。

 ◇少しずつフェードアウト

 ただ、I医師は開業当初から、計画的に若いうちに開業医を辞めることを希望していました。

 子供が大きくなったら、海外旅行などを夫婦でしながら、悠々自適の生活を送るのが夢です。

 当時は、子供が学生のため、収入源を完全に手放すことはできませんでしたが、できれば、10年くらいをかけて、ゆっくり少しずつフェードアウトしていくプランを考えました。

 I医師自身がM&Aを成功させ承継開業を果たしている経験から、次の自身の承継もM&Aがよいと迷わず選択しました。

 ◇10年スパンの引き継ぎ

 一方、J医師は、そろそろ開業を考えようかと思ったタイミングでM&Aを知り、興味を持って定期的に情報を集めていたところ、I医師のクリニックの承継と出合いました。

 5年前からJ医師との2診体制を取りました。最初の頃、J医師の勤務は週1日でしたが、毎年、徐々にJ医師の診療日を増やし、5年目には完全にJ医師のみの診察となりました。

 10年という長いスパンでの承継ですから、途中で思い違いや心変わりが出てはいけないということで、覚書を作成し、両者で合意しました。

 そこには、10年分を見通した給料面から、互いの診療日数の分担、途中で承継が破談になったときの賠償など、事細かな約束事が書かれていました。

 10年スパンの引き継ぎというのは、非常にまれなケースですが、医師2人の相性や考え方がうまく合えば、このような承継も可能です。


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