インタビュー

患者・家族らの「暴力」
医療職員苦しめ、診療に妨げ

   

 ◇スタッフを追い詰めない

 こうした事態は「職員のメンタルヘルスや仕事に対する満足度の低下を招き、患者への対応ミス、医療事故の増加につながりかねない」と三木氏は指摘する。それを防ぐために「病院やクリニック側が注意すべきことがある」と話す。

 「なぜ、すぐに相談しなかったのか」「なぜ、患者(家族)を怒らせたのか」。こう詰問するのは、「原因追及」で傷ついたスタッフをさらに追い詰める。「あなたの対応が適切ではなかった」という言い方は、問題を個人の責任に押し付ける。「誰もが経験していることだから」は根拠のない慰めだ。「一緒に飲んで嫌なことを忘れよう」「気晴らしをした方がいいね」は問題の先送りにすぎない。

 では、病院やクリニックなどはどう対応したらよいのか。三木氏は「まず、規模に応じてできることから始めることだ」と言う。対応マニュアルやガイドラインを作成し、あれば改訂していく。「何より大事なことは、医療機関のトップが院内暴力を許さず、職員を守るという方針を明確にすることだ」と強調した。

 ◇治療費不払いは厳禁

 こんなケースが紹介された。病院の救急外来に深夜、酩酊(めいてい)状態の外国人が仲間を伴って集団で来院する。他の患者に迷惑が掛かり、診療が滞り、暴力行為に発展しやすい。酩酊状態の外国人に殴られ、複数の人間が負傷したことを機に、病院は対策を講じた。こうした場合に備え、まずルールを定めることが重要だ。「感染症対策で付き添いの人数を制限させてもらいます」と明示するとともに、対応する職員を決めておき、診療とは別に対応するのがよいだろう。

 ある医師からは「子どもの親が治療に満足せず、料金を払わずに帰ってしまった」との報告があった。三木氏は「一度でも不払いを認めてしまうと、あそこの医院は『不払いでも大丈夫』と思われ、うわさがすぐに広まってしまう。不払い行為を認めることは駄目だ」と力説した。(了)



  • 1
  • 2

新着トピックス