一流のレジリエンス~回復力~Dr.純子のメディカルサロン

朝ドラのヒロインは「何者かになりたい女子」
コラムニスト・矢部万紀子さん

 海原 福田淳一前財務事務次官の言動をきっかけに、メディアで働く女性とセクハラの問題が注目されています。そうした経験はありましたか。


 矢部 私も35年近くメディアで働いていましたから、それに類する記憶がないかと言われれば、なくはないです。「セクハラ」という言葉がない時代でしたから、今でいう「告発」とは違うかもしれませんが、それに近いことをしたこともあります。「こんな目に遭った」と信頼できる上司に訴えたのです。

 その上司は「嫌な目に遭わせて申し訳ない」と言ってくれました。セクハラ→処分、というような回路が、私にも会社にもない時代のことなので、それだけでもすごいことだと思います。

 同じようなことがあっても、誰にも言わなかったこともあります。いずれにしろ、そんなことをする人物はいつかメインストリームから外されていくだろうと思うことで、自分を収めていたように記憶しています。ですから、まさかそういう人が事務次官にまで上り詰めるとは、夢にも思っていませんでした。


 海原 仕事で嫌なことや心が折れたときはどう乗り切ったのでしょうか。


 矢部 入社から数年経った頃、社内での息抜きの会話だったのですが、どんな部署に進みたいかと聞かれたので、ある部署を邪念なく(と、自分で言うのもおかしいですが、「楽しそうだな」という程度の気持ちで)口にしたところ、「その部署には、女性は行けない」と言われました。その時の悔しさは、よく覚えています。その部署は、男が主たるプレーヤーである世界をカバーしていたのですが、自分はそれに近い世界を一生懸命取材し、結果も出している自負がありました。その話をした相手は男性の先輩記者で、人事の責任者でもなんでもないのですが、実に楽しそうに、その部署へ進めるのは選ばれし男性だけだと語るのです。

  その日のことを思い出すと、今も小さくはらわたが煮えくり返るのですが、当時は言い返すことも、そういう状況を打開しようと動くこともしませんでした。その時の悔しい思いは、私の心のどこかで仕事の原動力、負けないぞ、みたいな気持ちに通じているかもしれません。私がそんな女人禁制的世界に押しつぶされることなく生きてこられたのは、きっと無意識のうちに、得意な分野に居場所を見いだしてきたからかもしれないですね。

 当時私が口にした部署は、社内でメインストリームとされていた部署でした。もしそこが彼の言うような女人禁制の世界でなく、私がそこに所属していたりしたら、私は会社にもっともっと従順な女子になっていて、転職することも、その転職先も辞めて、本を書くことなども、ありえなかったかもしれません。彼がいたから『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』を世に出せたと感謝すべきですね。それと朝日新聞の名誉のために、今その部署は女人禁制になっていないことを付け足しておきます。

「AERA」時代、サーカスを取材。ゾウが歓迎してくれたけれど怖かった。

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