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たとえ気後れしても、新しい世界へ一歩を 昭和女子大理事長・坂東眞理子さん

 ベストセラー著書「女性の品格」で知られる坂東眞理子さんは、昭和女子大学の理事長で総長。もともとは、内閣府の男女共同参画局で初代局長を務められた、働く女性の草分け的な存在です。現在は学生の教育だけでなく、幅広い年代の女性教育にも力を入れ、女性のビジネス参入も後押ししています。

 私も数年前から昭和女子大学での仕事でご一緒させていただいています。今回、「アラフィフ女子がどう生きるか」をテーマに、著書(タイトルは「言い訳してる場合か! 脱・もう遅いかも症候群」)を出版された坂東さんに、中高年女性の生き方やストレスからの回復力について、お話を伺いました。


 海原 最新著書「言い訳してる場合か!」を読ませていただきました。非常に興味深く、50代以降の女性は元気が出るなぁと思いました。今、この年代の女性に向けてメッセージを出されたのには、何か特別な理由があるのでしょうか。


 坂東 人生100年時代が現実になりつつあります。しかし、まだ人生半ばで、これから長い時間を持っているはずの50代の女性が、「もう今さら」「~だから」と言い訳をして、新しいチャレンジを諦めています。そういう例をたくさん見てきて、もったいない、もどかしいと思ったからです。


 海原 50代くらいになると、新しいことを始められなくなる方は多いですね。変化が怖いというか、腰が重いというか。


 坂東 何も変えず、今までと同じ世界に引きこもっていると、どんどん知人が減るだけです。自分から意識して、たとえ気後れしても、あえて新しい世界に一歩を踏み出す勇気です。そこで新しい発見をし、知らなかった出会いや、経験していないことを面白がりましょう。楽しむということが大事ですね。


 海原 経験を積んでからの学びについて、聞かせてください。


 坂東 今までの経験を延長し、付け加えていくか、全く新しい分野に挑戦するか、二つの選択肢があります。私は新しい分野での学びの方がワクワクします。


 海原 失敗や困難からの立ち直りについて、何かアドバイスはありますか。


 坂東 失敗をしたときは、冷静に失敗を直視し、新たな対応をしたり、助けを求めたりすべきでしょう。しかし、失敗に打ちひしがれているときは、あえてその問題から目を背け、旅行をしたり、自分の好きな仕事で忙しくしたりして時間を稼ぎ、少し心が回復してから改めて問題に向き合ってはいかがでしょうか。

 特別公開イベントで講演する坂東理事長
 海原 しばし緊急避難をして、心がそれに向き合う準備ができるまで、エネルギーを回復するのは大事なことですね。ところで、日本社会は女性に関して若さ至上主義です。その中で、年を重ねていく意味とは何でしょうか。



 坂東 私たちは年を取ったことにより、今まで分からなかったことが分かるようになる、見えなかったことが見えるようになるなどして、自分の成長を実感します。また長い人生の中で、いろいろな方の世話を受けたことを思い出すと、自分は幸運だったと思えます。自分の人生を受け止める力をつけることが年を重ねる意味ですね。


 海原 最後に女性へのメッセージをお願いします。


 坂東 
「人生は長きがゆえに尊からず」です。長く生きるだけでは価値がありません。また、人生は思った通り、計画通りには進みません。それでも、今できることを精いっぱいにやる。その積み重ねが人生を充実させ、自分を大事にすることにつながります。


 【編集後記】
 7月21日、昭和女子大ダイバーシティー推進機構の主催で、特別公開イベント「言い訳してる場合か!」が開かれ、私も足を運びました。タイトルからも分かるように、坂東理事長の著書を基にしたイベントです。坂東さんご自身の講演のほか、パネルディスカッションがあり、100人を超える参加者によって活発な討議が行われました。「もう年だから」「女だから」「私なんて」という言い訳をせず、自分の可能性を追求しようという女性たち。中高年の女性たちから「これからだ」との気合が伝わってきました。

                                 (文 海原純子)


 坂東 眞理子(ばんどう・まりこ)
 富山県生まれ。1969年東京大学卒業、総理府(現内閣府)入省。内閣総理大臣官房参事官、統計局消費統計課長などを経て94年男女共同参画室長。その後、埼玉県副知事、豪ブリスベーン総領事を歴任、2001年に内閣府男女共同参画局長。04年昭和女子大学大学院教授、女性文化研究所長、05年同大副学長、07年同大学長。14年から学校法人昭和女子大学理事長、16年から昭和女子大学総長。

 著書は「女性の品格」のほか、「日本の女性政策」「日本人の美質」「60歳からしておきたいこと」「ソーシャル・ウーマン」「女性の知性の磨き方」「女性リーダ4.0」など多数。



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