教えて!けいゆう先生
足の付け根に腫れ!「脱腸」かも
本当は怖い「鼠径ヘルニア」
患者さんが立った状態で、まず目で見て手で触って診察します。日によって大きさが違う場合は、せきをしてもらったり、いきんでもらったりすると、膨らみが大きくなって診断しやすくなることもあります。
次に横になってもらい、膨らみが元に戻せるかを確認します。あおむけに寝るだけで自然に還納して膨らみがなくなる人もいれば、手で押さえると戻る人もいます。その他、場合によってはCT検査や超音波検査を追加することもあります。
◇なぜ怖いの?
鼠径ヘルニアは、痛みや不快感などの症状がないケースもあるため、病院に行かずに放置する人が多いのですが、時に悪化して命に関わることもある病気です。
その理由の一つは、「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる現象です。隙間から出た腸管が元に戻らなくなることで、場合によっては首を絞められたように腸管の血流が障害されます。血流障害によって腸が壊死(えし)し、腸管を切除しなくてはならなくなる危険性もあります。
重度の場合は腸管に穴があき(穿孔=せんこう)、腹膜炎を起こすこともあります。腫れた部分が硬くなったり、触れただけで強い痛みを生じたりすることで気づかれますが、こうしたケースでは、しばしば緊急手術が必要になります。
鼠径ヘルニアは、腸閉塞の原因となることもあります。腹壁の隙間を通って脱出した腸管の内容物がスムーズに通過できなくなり、その部分より上流が交通渋滞を起こしてしまう現象です。消化管は口から肛門まで一本道です。どこかでこのような「事故」が起こると、そこで腸管が詰まってしまうわけです。
◇どんな治療をする?
腸管が血流障害を起こしているケースでは、緊急手術が必要になります。また、そうでなくても、痛みなど生活に困るような自覚症状があれば、原則として手術を検討します。
一方、嵌頓や、症状が悪化する危険性が高くないと判断されるケースでは、 患者さんと十分相談の上、経過観察とすることもあります。自己判断は難しいため、上述したような症状があれば、なるべく早く受診することが大切です。
なお、受診すべき診療科は外科(消化器外科)です。
鼠径ヘルニアは、薬や体操などによって治すことはできず、原則手術以外では完治しない病気です。治療のためには、脱出した腸管を元に戻し、腹壁の隙間を閉じる手術が必要となります。
手術の方法には、一般的には、腰椎麻酔(下半身の麻酔)あるいは局所麻酔で体表面から行う手術(鼠径部切開法)と、全身麻酔で行う腹腔(ふくくう)鏡手術があります。病院によって行っている手術の方法はさまざまですので、受診した上で医師と十分にご相談ください。
なお、特別な例外を除き、手術翌日から日常生活への復帰は可能です。ただし、激しいスポーツなどに完全復帰できる時期については、状況によって異なります。担当の医師と十分ご相談ください。
(参考文献)「鼠蹊部ヘルニア診療ガイドライン2015」日本ヘルニア学会ガイドライン委員会編
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(2018/09/19 10:41)