教えて!けいゆう先生

「Q&Aサイト」の落とし穴
医療情報の閲覧、十分注意を!

 ◇発信する人は責任を持たない

 私たち医師が患者さんに対面して話す時は、自分の発する言葉一つ一つを慎重に選びます。間違った情報を与えたり、あるいは与えた情報を間違って解釈されたりすることが、患者さんの健康被害に結びついては大変だ、という恐れがあるからです。

 私たちが情報発信する際は、常にこうした恐れや覚悟を持っています。

 ところが、Q&Aサイトの質問に回答する人は、自分の発信する情報に責任を持ちません。誤った情報が他人を傷つけても、それを目の当たりにすることはありません。匿名で回答できるため、面と向かって相談に乗るよりもはるかに回答の敷居は低くなります。

 このように気軽に発信される情報の中には、当然ながら信ぴょう性の低いものが混じります。中には間違った情報が修正されないまま掲載され続けることもあります。

 何らかの商品を使った体験談であれば、実際に購入して失敗しても取り返しはつきます。しかし、医療に関する間違った情報は、他人に取り返しのつかない健康被害を与えることがあります。Q&Aサイトを参照する際は、質の低い回答が存在することを十分考慮した上で慎重に解釈する必要があります。

 ◇信頼性の高い情報は得にくい

 私たち医療の専門家は、「おそらく正しいと思われるが、その根拠が十分ではない情報」というものをたくさん持っています。

 こうした情報は、お互い信頼関係ができて、かつ直接診察ができ、対面して会話ができる患者さんに対して私見としてお伝えすることはできますが、不特定多数の人が書き込むネット上には発信できません。

 誤解を招く可能性がある、必ず例外がある、同業者から反論があって情報が混乱する可能性がある。私たちはこうした恐れを持っているため、科学的根拠があって十分に正確だと思われる情報しか、不特定多数の相手には発信できません。

 これが専門家の感覚です。

 一方、非専門家はこうした恐れなく気軽に発信できます。そして、こうした方々の「誰かに自分の持つ情報を伝えたい」「感情を共有したい」という強い思いは、ときにその情報の正しさを慎重に吟味することより優先されます。

 Q&Aサイトの回答には、こういう「発信のハードルが低い人たちからの情報」が現れやすい、という傾向を分かっておく必要があるわけです。

 不特定多数に疑問を投げかけ、その答えが早急に得られるQ&Aサイトというツールは、一見非常に便利です。しかし、使い方によっては取り返しのつかない被害のリスクがあります。このことを十分認識した上で、うまく利用していただきたいと思います。

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