治療・予防

不妊、骨粗しょう症も
高プロラクチン血症

 妊娠していないのに月経が止まったり、乳汁が出たりする場合、「プロラクチン」というホルモンが過剰に分泌している可能性がある。不妊にもつながるこの「高プロラクチン血症」について、神戸大学医学部付属病院(神戸市)糖尿病・内分泌内科の高橋裕准教授に聞いた。

 ▽20~30代が中心

 プロラクチンは脳の下垂体から分泌されるホルモンで、妊娠中から授乳期にかけて分泌量が増える。乳腺の発達や母乳の分泌を促すとともに、授乳中には月経を止めて妊娠を防ぐ役割がある。

不妊治療中に見つかることも

不妊治療中に見つかることも

 このプロラクチンが妊娠期、授乳期以外に分泌され過ぎると、月経不順や無月経、不妊、乳汁の分泌などが表れる。高プロラクチン血症は20~30代での発症が多く、無月経が長期間続くと、女性ホルモンの分泌低下につながり、骨粗しょう症などを招くことがある。

 高橋准教授は「高プロラクチン血症は、薬が原因になることが少なくありません」と話す。通常は、ドーパミンというホルモンがプロラクチンの分泌を調整しているが、病院で出される向精神薬や胃薬、降圧薬などにはドーパミンの働きを抑える作用があり、血中のプロラクチン濃度が上がりやすくなる。

 下垂体にできた良性の腫瘍がプロラクチンを分泌する場合もある。腫瘍が発生する原因は分かっていないが、腫瘍が大きくなると、頭痛や視力低下、視野狭窄(きょうさく)なども表れやすい。

 ▽治療で妊娠可能に

 高プロラクチン血症の治療は、薬が原因なら、処方した医師と相談して薬を中止したり、別の薬に切り替えたりする。腫瘍性であればドーパミン作用のある薬を飲むことで腫瘍を小さくできることが多い。腫瘍の働きを抑えることでプロラクチンの分泌量が減ると、症状は改善する。

 高プロラクチン血症は不妊治療クリニックなどでよく見つかる。腫瘍性でも薬を飲めば多くは数カ月で症状が治まり、妊娠も可能になるという。高橋准教授は「症状に心当たりがあったら、婦人科や内分泌内科を受診してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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