（第１１回）患者・家族と医療の間で
看護師が担う新たな役割

　－－現在、新たに看護師を目指す学生の教育をされています。どのようなことを意識してほしいとお考えでしょうか。

　◇「関心」を寄せる

　高谷　患者だけではなく、患者の家族にも「関心」を持てる看護師になってほしいと思います。

　例えば、小児がんの患者の場合、大変な治療に取り組む患者自身をサポートするとともに、「２４時間お子さんに付き添うお母さんは、ちゃんと寝られているだろうか。仕事の調整はうまくできているのだろうか」というように、患者の家族の状況まで思いを巡らせて、「お母さん、夜は眠れていますか」と声をかけるなど、「関心」を寄せてほしいと思います。

　つらい治療や慣れない入院環境で生活する子どもやその家族にとって，「無関心」ほど怖いことはないのです。

　－－お話しをお伺いし、看護師という存在が患者の治療を支えるだけでなく、患者を含む家族の生活を支えていることが分かりました。今後、在宅医療の拡充が進み、看護師の役割に対する期待がますます高まるのではないかと思います。ありがとうございました。

　高谷　ありがとうございました。

　◆医療の進歩だけでは不十分

　医療技術の進歩に伴い、新しい医薬品や医療機器が開発され、医療は継続的に発展しています。一方、医療技術の進歩だけでは十分ではないことも感じました。そこには、患者の家族と医療職者の人間的な関係があり、また病気の治療に伴う生活への影響について幅広く思いを馳せるケアがあります。その担い手である看護師の役割に、今後も注目していきたいと思います。（ＣＤＩメディカル・杉本宗優）

高谷　知史（たかたに・さとし）
兵庫医療大学看護学部看護学科小児看護学分野　助教
看護師、保健師
慶應義塾大学看護医療学部を卒業後、神戸大学大学院保健学研究科において保健学修士号を取得し、現在、同大学院博士後期課程（博士課程）に在籍中。
慶應義塾大学病院、神戸大学医学部附属病院（看護師）を経て現職に至る

杉本　宗優（すぎもと・むねまさ）
株式会社CDIメディカル主査、イスラエル・ドイツ医療機器担当。慶応義塾大学総合政策学部卒、ワシントン大学オーリン・ビジネススクール（MBA）、KPMGあずさ監査法人、ノバルティスファーマ株式会社経営計画部を経て現在に至る。