(第11回)患者・家族と医療の間で
看護師が担う新たな役割
--患者を含む家族と、医療職者との人間的な関係が、治療アウトカム向上につながる、という概念は非常に新鮮に感じました。家族コンコーダンスの重要性を認識されたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
インタビューに応える高谷氏
高谷 臨床の看護師として仕事をしていた時に、肝臓移植を受けた乳児を担当しました。移植手術は成功し、無事に退院しましたが、その後容体が安定せず、再入院を繰り返したことがありました。
患者さんの家族に事情をお伺いしたところ、退院後の療養管理に問題があることが分かりました。患者さんは移植手術を受けたため、退院後も決められた時間に免疫抑制剤を服用する必要がありますが、それが徹底されていませんでした。また患者さんの感染管理が徹底されておらず、感染症を起こすこともありました。
◇家族全体のライフスタイル
なぜ患者さんの家族が、服薬や感染管理を十分に出来ないのかと考えたところ、はじめの入院時に患者さんの家族と医療職者との関係が十分に構築出来ていなかったことに思い当たりました。当時、看護師である私を含め、担当していた医療職者が、その患者さんの家族とのコミュニケーションに苦手意識を感じており、退院後の患者さんを含めた家族全体のライフスタイルを尊重した療養管理の支援が十分にできていなかったかもしれません。
つまり、その家族のライフスタイルと療養生活の調和(コンコーダンス)を目指した支援が不十分であったように思いました。また、患者さんの家族に何か困ったことがあった際に、医療職者に気軽に確認することが出来なかったのかもしれません。これは、その家族と私を含めた医療職者との関係が調和(コンコーダンス)していなかったように思いました。
◇「自分たちでも出来そうだ」
当時を振り返りながら反省するとともに、患者さんの家族に「この先生や看護師の言うことであれば、自分たちでも出来そうだ」と思ってもらうまでの、双方が調和(コンコーダンス)した関係を構築することが、非常に重要であるとの考えに至りました。この経験が家族コンコーダンスの重要性を認識した礎になっています。
(2018/12/01 06:00)